第四十二幕:見えない虹に気付く時
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洗ってきた七夏ちゃんは、とても満足そうな表情だ。俺を待たせて申し訳ないという気持ちが全く感じられない事が本当に嬉しい。
時崎「まだ本館で見ていない所があるけど、それも見る?」
七夏「はい☆」
再び、水族館の本館に戻ってきた。先ほど周ってきた方とは違う方を見て周る。
時崎「こっちは、深海魚かな?」
七夏「クラゲさんも居ます☆」
時崎「まさに流れに身を任せてだね!」
七夏「くすっ☆」
俺は虹色に輝く生き物がいないか無意識に探していた。虹色に輝く深海生物を水族館で見た記憶がある。虹色の中には、七夏ちゃんでも七色に見える虹色があるかも知れないと、思っていたからだ。そんな中、七夏ちゃんが、ある水槽を眺めて、声を掛けてくる。
七夏「柚樹さん☆」
時崎「どおしたの?」
七夏「これ、見てください!」
その水槽は、台の上に円柱を輪切りにして、横倒ししたような形状だった。円柱の厚みは20cm程で円の大きさは直径60cmくらいだろうか・・・。その円の周り付近を、沢山の小さな生き物が、くるくると回りながら移動している。円柱水槽の反対側から七夏ちゃんが姿を現す。
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七夏「カニの幼生さん・・・です♪」
七夏ちゃんが、そう話してきた。
時崎「カニの幼生!? 沢山いるね!」
七夏「え!? たくさん? えっと・・・」
時崎「ん? だって、数え切れないでしょ?」
七夏「ひとつ、ふたつ、みっつ」
時崎「か、数えるの!?」
七夏ちゃんは、何かを数え始めた。何かって、カニの幼生である事は間違いない。しかし、こんなに無数にいるカニの幼生を、数えるなんて無謀だ。
七夏「よっつ、いつつ、むっつ」
時崎「七夏ちゃん!?」
七夏「ななつです☆」
時崎「え!?」
七夏「くすっ☆ 」
なんか、話がかみ合わない。これはどういう事だ!?
まてよ!? どこかで聞いたような言葉・・・今朝の夢っ!!!
七夏「ななつ・・・です☆」
時崎「え!?」
七夏「あっ・・・えっと、ななつの幼生さん♪」
時崎「ななつの幼生・・・って、カニの幼生の事!?」
七夏「はい☆」
七夏ちゃんは、カニの幼生がななつ・・・つまり、七匹いると言いたいという事が分かった。しかし、俺の目にはカニの幼生が七匹どころか無数に居る様に見える・・・とてもじゃないが数え切れない。七夏ちゃんは虹以外にも、他の人と感覚の違う物があるのかも知れないと、少し不安になってきたから、俺は訊いてみた。
時崎「えっと、七匹どころか、無数にいない?」
七夏「え!?」
時崎「ほら、こんなに沢山、くるくると回って・・・」
七夏「あっ!!」
七夏ちゃんにも、それが見えていたようで、ほっとした。
七夏「柚樹さん☆ それは
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