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人理を守れ、エミヤさん!
おもてなしだね士郎くん!
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 組伏せられた手弱女を彷彿とさせられる。
 真紅の復讐者は自然の理を捩じ伏せ――その脚で海の上に立った。

 神話に曰く。

 『ヘラの栄光』と名乗らされた英雄はその第五の試練にて、決して洗い落とせぬと思われていた神獣、聖獣の糞尿に塗れた家畜小屋を洗浄する為に、二つの河の流れを呼び込んで強引に洗い流したという。――即ちそれこそは、水の理の支配に他ならない。
 束ねられた天と海の理、その圧倒的な魔力は大地を削り、大陸をも抉るだろう。其れは軍勢など歯牙にも掛けず、城壁など防波堤としても機能させない。国を滅ぼし、世界に亀裂を刻む、まさに暴圧の具現。

 雲という水、海という水を近くに置いていたアルケイデスにこそ地の理はあった。

 復讐者は自らの腕に装填した、桁外れの潮流と雷鳴を轟かせ、軋むような憎しみを込めて囁く。

「『人の星、震撼せし万象(アウゲイアス・ヒュドール)』」




 二つの札を潰され、一つの鬼札を切った。

 人理の救済を目指す男は嗤う。狙い通り、と。
 歪まされた大英雄の残骸も嗤う。思った通り、と。

 思惑を乗せた船は航行を止めず、もう間もなく陸地へと辿り着こうとしていた。







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