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人理を守れ、エミヤさん!
おもてなしだね士郎くん!
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敢に攻める。大楯を前面に押し出した体当たり。その楯を破ること能わぬと、復讐者は認めていた。故にアルケイデスは魔大剣ではなく、片腕でその突進を受け止め、マシュの背後より飛び出してきた黒王の剣撃を魔大剣で止める。
 重い。片腕では止めきれない。たたらを踏んだアルケイデスへ、麗しき華の怒りが叩きつけられた。

「不快である、余の眼前より消えよ――!」
「後詰めは拙者に任されてぇ!」

 深紅の工芸品が如き剣は灼熱を纏っていた。アルケイデスはその剣を、この期に及んで曇りもしない心眼で捉え、敢えて神獣の裘で止める。しかし死角より飛び込んできた黒髭の飛び膝蹴りは防げなかった。いや、防がなかった。
 感じていた。巨漢の殺気を。だがそれは致命的ではない。敢えて打撃を受ける事で、アルケイデスは自ら吹き飛ばされてこの死地からの離脱を目論んだのだ。だが――蒼き騎士王が打撃の一つのみで易々と逃しはしない。お土産を忘れているぞとばかりに暴風を装填している。

「風よ、撃て――『風王鉄槌(ストライク・エア)』!」
「ッ!」

 アルケイデスの全身を風の魔力が打ち据える。船外に押し出されたアルケイデスは己が決して軽くない傷を負ったのを自覚する。
 襤褸屑となった体が宙を舞い、されどカルデアの猛攻は止まらない。

「我が弓と矢を以って太陽神と月女神の加護を願い奉る。この災厄を捧がん。――『訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)』」

 アルカディアの狩人の宝具である。天に向かって放たれた二本の矢が、雲を突き抜け変じた。
 間断なく降り注ぐは矢の弾幕。一軍をも射殺す封殺の空間。それはアルケイデスの守りに対して全くの無力だった。だが、空中に打ち出されていたアルケイデスに回避はままならず、迎撃も間に合わなかった。
 全身を矢の弾幕に打ち据えられ、あらゆる動きが封じられた。ケリュネイアの牝鹿も召喚出来ない。下手に呼び出せば瞬く間に蜂の巣となるだろう。故にアルケイデスは、そのままなら海面へと叩きつけられ、そのまま沈んでいく定めだった。

 故に、アルケイデスは手札を切る。

「森羅万象とは遍く暴威(カミ)の似姿だ」

 ――不意に海流がうねった。歪み果てた復讐者が、海面に落ち行く中で赤黒い腕を天に伸ばしている。
 天を翳らせる暗雲。逆巻く瀑布の如き魔力の奔流。稲妻を纏いてアルケイデスの腕へと堕ちる、自然(カミ)の力。

「謳うは悍ましき暴君の弑逆。なればこそ、私は万象(カミ)の力をも捩じ伏せよう……!」

 天より逆巻きて堕落する暗雲は竜の如く。彼を呑まんとする大海もまた翻り、彼の下へと集う。
 あたかも天の権能を簒奪するかのような。海の潮流を踏みにじるかのような――海面へと落ちたアルケイデスを、大海は甘んじて受け入れる。


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