おもてなしだね士郎くん!
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の威容は宝具の特性で魔界の牙が如きそれへと変貌している。大砲に面していた海面が、砲撃の衝撃で大きく抉れた。
砲弾は矢の飛来した方角へ向けられていた。間断なく撃ち放たれる絨毯爆撃は、一国を一時間もあれば焦土に変えてしまいかねない大火力。打ち上がる水柱は天にも届き――爆発は海をも引き裂く。誰の予想をも上回る火力の強化率に黒髭は喝采を上げた。
「ハッハハハ、ハァーハッハッハハハハデュフフフwww 行けや低級霊の野郎どもぉ! 虫の息の糞野郎からお宝を根刮ぎ奪って来やがれハハハ! これで勝った、黒髭完!」
具現化するは黒髭艦隊の無数の低級霊、全てが海賊である。
嘗てカリブ海に君臨した大悪党の支配下にあった多数の海賊、その物量は数多の英霊が持つ宝具の中でも極めつけだった。
船員に多数のサーヴァントがいたら、海という戦場に於ける最強は黒髭なのではないか――その戦慄に多大な説得力が滲む。
低級霊もまた大幅な強化が加わり、その一体すらもがサーヴァントの残留霊基であるシャドウ・サーヴァントに匹敵する。圧倒的物量に質が加わり、もはや単騎の敵に成す術はないかに思われたが――しかし。海賊の亡霊らは海面を疾走し、不気味な鬨の声と共に矢を放って来たであろう復讐者に襲い掛かるも。
其処には誰もいなかった。
戸惑ったように振り上げた剣の行き場を探す海賊の亡霊。高笑いしていた黒髭は目を点にする。あり? あの糞野郎はいずこへ?
困惑する黒髭の後頭部へ矢玉が飛来する。黒髭がまるで反応すら出来ていなかったそれを、槍の一閃で叩き落としクー・フーリンが喚起する。
「来たぜッ」
――げに恐ろしきは神速の聖獣。召喚者が神性を捨てた者故に神獣の位は喪失しているも、その脚が鈍る事はなかった。
自身を捕捉すらしていない砲撃など恐れるまでもないとばかりに、ケリュネイアの牝鹿は『アン女王の復讐号』による砲撃を、発射前から爆撃地点より脱出していたのだ。
正確な位置を掴まれる前から回避していた聖獣は、騎乗者の意思を受けて船体の後尾についたのである。そのまま荒海を蹴り海賊船の頭上より船を展開している黒髭を弓で狙った。矢は弾かれる、あわや絶命する寸前であった黒髭は、しかし危機感を抱いた素振りすらなく頭上を仰ぐ。
優雅に虚空を飛び越えていく、黄金の角を持つ牝鹿。巨漢は吼えた。
「――分かってんだよ、勘で撃った砲弾に当たるほど鈍くは無ぇってなぁッ!」
ネメアの獅子の毛皮を剥いで加工した、神獣の裘より船上を垣間見る復讐者の眼光。『アン女王の復讐号』の上空を飛び越えるまでの時は刹那、されど卓越した動体視力を持つ復讐者にはそれで充分。
黒髭、光の御子、錬鉄の弓兵、二騎の騎士王、楯の少女、聖杯の嬰児、狩人――狐? 新たな敵影を確認する。
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