運命を感じなくもないね士郎くん!
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かしてエミヤさんの仰るご主人様は……女性、だったりするんですか?」
「ああ。というより、タマさんの云う白野は男みたいだな」
「ええ、男性です。しかしあの方の記憶――幼い故に顔などは曖昧でございましたが、確かにエミヤさんとのやり取りは明瞭に残っておりました。私のご主人様のオリジナルである方は男性ですが、異なる世界でも貴方と出会っていたのですね」
「そうか……白野が男か。ふ、さぞかしいい男になったんだろうな……」
「それはもう! そして――ええ、どうやら貴方はご主人様にとって、とても大切な方のようです。それだけ分かればもう充分! 私が惹かれたご主人様に、貴方が多大な影響を与えたとなれば私にとっても恩人です。善き出会いを、ありがとうございますと言わせてください」
「礼は要らない。白野が歩み、白野が君を惚れさせた。ならそこに俺みたいな外野が関わる余地なんか無いんだからな」
「それは確かに。私のご主人様はまあ、厳密に言えばその、地上のご本人とは直接的な繋がりをお持ちではありませんでしたし。――でも、そんな中でも、貴方との事を覚えていられるほど深い想いでした。ですので、私が貴方に感謝するのは私の勝手。そういう事です」
なるほど。
勝手に感謝されるのは座りが悪いが、それを咎める権利はこちらにはない。玉藻の前が感謝してくれているなら、そんな俺に恥じない在り方を俺が保てばいいだけだ。
「――私に呼び掛ける声が届いたのは、私にネロさんとの縁があったのと……私と懇ろにお付き合いくださるご主人様と、エミヤさんに深い縁があったからなのでしょうね。謂わば貴方がここで命を拾ったのは、貴方のこれまでの道が貴方を見捨てなかったから。エミヤさんは、善き道を歩まれていたから、勝手に助かった。ですのでエミヤさん、私に感謝する必要はありません。どうか自然体でよろしくお願いしますね」
「了解した。だが感謝の気持ちは忘れない。それも俺の『勝手』だろ?」
「みこっ? あら。これは私としたことが、一本取られてしまいましたね」
そう言って、玉藻の前は口許を裾で隠し、典雅に微笑んだのだった。
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