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人理を守れ、エミヤさん!
運命を感じなくもないね士郎くん!
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れそうですしね」
「――ああ、見知らぬ誰かの良妻狐の玉藻さん。略してタマさん。話があるんだが、いいか?」

 何やら意味深なやり取り故に割って入るのは躊躇われたが、どうにも一段落ついたようなので、一応の断りを入れる。
 すると玉藻の前はにこやかに応じてくれた。矢鱈とフレンドリーというか、距離感が近い。何故なのか。

「はい。その前に一つ、こちらからよろしいですか?」
「ああ、どうぞ。レディ・ファーストだ」
「あらお上手。――えっとぉ、いきなり過ぎて可笑しく思うかもしれませんが、貴方のお名前は衛宮士郎、あそこのキザな弓兵とは起源が同じなだけの別人である殿方ですよね?」
「? そうだ。それがどうかしたか?」
「いえ。ということは、辿った人生の道筋も異なると受け取って構いません?」
「ああ」

 何が聞きたいのか、僅かな逡巡と共に彼女は曖昧に言う。

「ふわっとした感覚でお訊ねするのもアレなのですけど……以前私がお仕えしたご主人様――あ、もちろん今もお仕えしてるんですが。それはそれとして、奇妙な直感というか良妻の予感と云いますかですね……」
「……?」

「あの、もしかして、荒唐無稽で脈絡がないのは百も承知ですが……エミヤさん。もしかして貴方は……『岸波白野』様というお名前に聞き覚えがあったり……します?」

「白野? 知ってるが……なんだ。まさかタマさんのマスターは白野だったのか?」

 何気なく応じる。というか白野……平行世界の事なんだろうが、お前も聖杯戦争に巻き込まれてるのか……。思うところはあるが、玉藻の前の雰囲気的に無事ではあるのかもしれない。

 ビーン! と玉藻の前の耳と尻尾が逆立った。おお! と感動を露にするタマさん。俺としてはその耳と尻尾が気になる。切実に触りたい。が、流石に不躾かつ破廉恥なので自重した。
 何を隠そう俺は犬派であり猫派でもある。寧ろ可愛いものは満遍なく好きだった。

「やっぱり! で、で! どんな感じでお知り合いに!?」
「話せば長く――は、ならないか。普通に旅先で出会って、幼い白野に懐かれてな。白野のご両親共々親しくさせてもらっただけさ」

 一体の死徒を巡り、聖堂教会と魔術協会の狩りが行われ……旅先の長閑な街は火に包まれた。
 俺にとっては今後、滅ぼすべき邪悪を見定めたターニング・ポイントだったが、被害者にとってはあくまで悲惨な悲劇だった訳である。一言で語れるものではないし、軽々しく語るべきでもないだろう。だから親しくさせてもらった、という部分しか言えない。

 玉藻の前は目を輝かせて幼い頃の白野の話をねだってくる。それに応えて、出来る限り詳細に当時のやり取りを語った。
 しかしふと、俺も感じていた違和感を、玉藻の前は問い掛けてきた。

「――あの、もし
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