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人理を守れ、エミヤさん!
戦慄の出会いだね士郎くん!
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 ガシガシと紅髪を掻き、これより後に星の開拓者として人理に名を刻まれる女は、気まずそうに目を逸らした。

「あー……すまなかったね。アタシが寝てた時にそんな大事があったなんて」

 寧ろあの戦闘の最中に寝ていられる豪胆さは、ある意味で大したものだ。貶しているのではなく素直に感心してしまえる。
 俺がそう言うと、ドレイクは顔を顰めた。折れていた腕と、光を失っていた目を瞼の上から撫でる。

「……おまけにこれだ。アタシの腕と眼、ウチの死にかけの連中をワケの分からない力で治してくれた上に、アタシの『黄金の鹿号』までアンタの部下に直してもらってると来た。とても返しきれないでっかい借りが出来ちまったよ」

 気にする事はない。怪我を治したのは治せる奴がいたからで、おたくの船を直したのは俺が寝てる間に赤と青の野郎にネロが指示をしたからだ。俺ではなくネロに感謝してくれ。

「アンタね……それマジで言ってんのかい? だとしたらとんでもない野郎だ。アタシの大ッ嫌いな正義漢そのものじゃないか」

 心外だ。無償で恩を受けるのが嫌だってんなら何か協力してくれ。聖杯を持ってるんなら、サーヴァント相手でも攻撃が通るかもしれない。不思議な聖杯パワーで。
 ……いや、やっぱり今のは無しだ。聞かなかった事にしてくれ。生きてる人間にあのヘラクレス野郎と戦わせる無謀は冒させたくない。借りだと思ってくれるなら、どこか遠くへ逃げてくれ。

「……舐めてくれたねぇ。けどま、道理っちゃ道理だ。なんせ相手は酔っ払いの法螺話にもなりゃしないギリシャ神話のヘラクレス! しかもそれが神話と真逆の性格になって、手段を選ばず命を奪りに来るとなったら誰だってブルッちまうもんさ。ましてや実物を見ちまってんなら尚更ね」

 キャプテン・ドレイクの顔は挑戦的な笑みを浮かべている。沸き立つ海賊の血潮は、怒りやら屈辱やらに燃えていた。

「アンタ、知ってるかい? アタシの『黄金の鹿号』は、クリストファー・ハットンの紋章に因んで改名したもんだ。ペリカンって間抜けな名前が気に入らなくてね。
 ……ハットンの紋章の由来はヘラクレスの三番目の功業、ケリュネイアの牝鹿の捕獲に掛かってるんだ。ハットンはエリザベス女王を支えた三番目の男で、その『三番目』ってのに掛けたんだろう。あの旦那はアタシの大のお得意様だ。ヘラクレスを貶める真似は、ハットンを侮辱してるって事だ。そしてそれは、巡り巡ってこのアタシも虚仮にしてるって事なんだよッ!」

 ドレイクは激怒していた。あの復讐者のルーツに。海賊は面子が命である、それはフランシス・ドレイクにとっても同様だ。
 故に、彼女は赦さないのである。

「ハットンの名誉はアタシの面子にも掛かってんだ。例え本家本元だろうが赦せるもんかい。いい
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