「健在なのは」
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人間、神の力などなくとも、人があの毒に耐え得るのが素直に喜ばしい。実に打ち倒し甲斐があるというもの。
そして、思い出す。
「まさかな。あの男が、冬木の時の小僧だったとは」
縁というのは、やはりバカにできない。自身の記憶にある、忌々しい神に成り下がった愚物が仕えた、冬の妖精のような少女の義弟があの男だ。
気持ちの良い少年だった。『二度目の茶番時は見れたものではなかったが』、その力は赤い弓兵のそれと同一だった。
同じ顔、同じ力――同一存在なのだろう。内面は違うのだろうが……まあそれはいい。
問題は敵の陣容の厚さ。片腕を失ったのは、極めて大きな損失である。あの男が復活する前に仕掛けたいが、正面から向かうのは無謀。かといって二番煎じの奇襲では対処されるのがオチだ。
まともに戦いを成立させられないほどの痛手、これをどう補うかが――
「むッ」
――と、勝負の分かれ目について思考していたアルケイデスは、悍ましい異物感を覚える。
腕の切断面が疼き、グヂュグヂュと肉が沸騰したように沫立ったのだ。ぞわりとした不快な感覚は、しかしすぐさま立ち消える。
それらを遥かに上回る驚愕と、得体の知れぬ納得があったのだ。
喪ったはずの腕が再生していた。
――これなら戦える。
亀裂が走ったように不気味に笑み、復讐者は嗤う。そう己はカルデアに復讐する為に存在するのだから。
その思考に、違和感はなかった。
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