「健在なのは」
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話は終わりだ。もっと建設的な話をしたいよ、俺は」
『どの口が……! その建設的な話とやらを蹴ったのは貴様ではないかッ』
「怒るなアッ君」
『我が王よ、どうかこの愚か者へ裁定を。私の言葉は届かずとも、王のお言葉ならば耳を傾けるやもしれません』
士郎の傍には、アルトリアとオルタ、マシュがいた。他のサーヴァント達はネロの指揮の下、哨戒に当たっている。あの痛烈な奇襲が強烈に刷り込まれていた。
アルトリアは静かな眼差しで士郎を見詰めた。オルタは視線すら向けない。赤い弓兵と完全に一致するようになってしまった風貌の青年は、彼女が口を開くのを待った。
「シロウ」
目を逸らさず、アルトリアは説く。
「私は騎士です。貴方の剣になるという誓いは、些かも揺らいでいません。貴方が命じたのなら、私は如何なる者も斬る刃となるでしょう。しかし私は木偶ではないつもりです。諾々と従うだけでどうして騎士であると誇れるでしょうか。
故に私は、騎士として諫言しましょう。シロウはもう限界だ。いえ、もう限界を超えている。貴方は休むべきです。誰もシロウが休息を取る事に異議はない。あったとしても、私が黙らせます。
シロウ、私は貴方だけの騎士だ。貴方が不在でも、必ずや勝利を掴みましょう。私を信じて、下がってはくれませんか……?」
哀願ではない。懇願しているのでもない。身を案じ、主の無謀を諫めている。
本当は愛する青年に縋り、涙ながらに休んでくれと愁訴したかったのを、士郎の鋼のような瞳に封じられていた。
琥珀色の瞳を伏せ、士郎は瞑目する。吹けば飛びそうな程に弱った、老人のような佇まいで。
「……アルトリア、俺はお前を信じてる。嘘偽りなく、その力と心を信頼している。それはお前もそうだと思っている」
「はい」
「だから――俺がどう答えるかは、言わなくても分かっているはずだ」
「……」
「先輩」
哀しさを隠すように目を閉じたアルトリアに代わり、マシュが心細げに呼び掛けた。ふぉう、と小動物が鳴く。
「私は、どう言えばいいかなんて、解りません。けど先輩が――いなくなってしまうかもしれないと思うと、どうかしてしまいそうで……」
「大丈夫だ。俺はいなくならない。死んだりなんかしない。マシュやアルトリアが護ってくれるんだからな」
「……ずるいです」
そんな事を言われたら、本当に何も言えない。士郎の意思を曲げさせられない。
しかし士郎も弱っていた。つい、白状する。
「A班の全力戦闘を俺が支えられるのは、保って後三回だ」
「……シロウ、それは」
オルタが漸く視線を向けてくる。ばつが悪そうに頭を掻いて、士郎は嘆息する。
「つまりその三回の戦闘の後は、カルデアに帰還するという事ですね」
「……そう、だな
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