「健在なのは」
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に応じる訳もない。人質を取るかもしれない、奇襲闇討ちは当たり前だ。罠を仕掛けるのも基本だな。――最も狙われるのは、アイリさんとネロだ。アルトリア達を信頼してない訳じゃない、ネロの能力が足りてない訳でもない。単純に敵の脅威とこちらが保持する戦力、守らないといけない人数の釣り合いが取れてないんだ」
『その海賊達を護る必要はない。現地人が他にいても同様で、そもそも人質は無視すればいい。大事の前の小事だ、敵の撃滅のみを考えねばならない局面に在る』
「――認める。お前の言う事は正しい。だが正しいだけだ。それじゃあ、駄目だろう? 人理を巡る戦いって、のは……大事も小事もない。……生きる為の戦いに、貴賤はないんだ……」
不意に意識が混濁としたようだ。言葉尻が緩くなる。意見の具申に聞く耳を持たないマスターに業を煮やすも、英霊としての本能で納得してしまいアグラヴェインは苦々しく顔を顰めた。
きゅぅ……と、フォウが鳴き、士郎の頬を嘗める。それに反応を示す余力もなく、士郎はか細い息を吐き出した。
『……マスター、一時帰還し急速を挟んで、再度レイシフトすればいい。それでいいだろう』
「駄目だ」
木の幹に背を預け、片膝を立てて座っていた士郎は、言下にカルデアの司令官代理の提案を退けた。
「……そこにロマニはいるか?」
『いないよ。今は休んでる。あと二時間の仮眠を挟んで戻ってくるよ』
通信に割り込んできたのはレオナルドだった。
士郎は安堵する。アグラヴェインは本人が聞いていようがお構いなしに今の台詞を吐いていただろうから。
レオナルドがアグラヴェインに代わって言う。
『私も君が一時帰還する事に関しては賛成だ。――無理すれば死ぬよ、士郎くん』
「……生憎と、無理を通して道理を蹴っ飛ばして生きてきた口でね。この程度で死にはしない」
『士郎くんに廃人になられたら困るって言ってるんだ! 士郎くんが倒れたらカルデアの士気は破綻しかねないんだぞ!? それぐらい大きすぎる信頼が君の命には掛かってるんだ、一回ぐらい素直に言う事を聞けこの分からず屋!』
「……すまないが、譲れないな」
レオナルドの叱責とも、懇願とも、罵倒とも取れる怒声に士郎は苦笑した。
全面的に彼らの言い分は正しいのだ。それでも譲らない理由は意地であり、計算であり、情でもあり、信念でもある。
やられっぱなしでいられるかという意地。
明確に弱っている士郎は格好の餌になる故に、敵の狙いを誘導し易くなるという計算。
ネロ一人を死地に送り出したくないという情。
言葉にするのは難しい、信念――
どれも譲る気はない。そのどれか一つでも妥協出来ていたなら、そもそも士郎は死徒狩りをはじめとする苛烈な戦いに身を投じていなかっただろう。
「この
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