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ムーサー
第四章

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「貴様等戻ってきたのか」
「何をしに戻ってきた」
「イスラムの教えなぞ知るものか」
「その様な教えを広めるな」
「そう言わずにお聞きあれ」
 ハールーンは彼等に対してその雄弁を出した、するとすぐにだった。
 多くの者がイスラムの教えに改宗した、ハールーンは彼等を見て笑みを浮かべた。
「この通りだ」
「兄上が語られればですね」
「多くの者が聞いてだ」
 そうしてというのだ。
「イスラムの教えを信じてくれる」
「いいことですね」
「全くだ、だがな」
「教えを聞かぬ者もいますね」
「フィリアウンをはじめとしてな」
「そうですね、そうした者達には」
「そなたの杖を使うのだ」
「わかっています」
 ムーサーもわかっていた、それでだった。
 フィルアウンに言われて二人を倒す為に来た妖術師達が自分達が持っている杖や縄を蛇にして二人を襲わせたが。
 ムーサーは杖を蛇に変えて彼等の蛇を全て飲み込ませた、これには妖術師達も仰天した。
「我等の術を破っただと」
「エジプトで随一の妖術使いの我等の術を」
「何と恐ろしい杖だ」
「とんでもない杖だ」
「この杖こそはアッラーのお力」
 ムーサーは驚く彼等に告げた。
「この程度は何でもない」
「何ということだ」
「それがアッラーの力なのか」
「恐ろしい力だ」
「そして素晴らしい力だ」
 彼等はアッラーの力を知ってそれに感じ入ってだった。
 ムーサー達の前に平伏してムスリムとなった、だがフィルアウンは諦めず。
 今度は七人の刺客を送った、刺客達は二人を襲う前にこう話した。
「あの杖はまずい」
「二人が寝ている時に襲おう」
「そうすれば杖も使えまい」
「ならば夜を待とう」
「夜に襲おう」
 こう話してだ、彼等は夜を待った。
 そうして二人が寝ているのを確認して襲ったが。
 杖は自然に動き七人を叩きのめした、二人は杖が七人を叩き彼等の呻き声で起きた。
「刺客か」
「その様ですね」
 ムーサーはハールーンに起き上ってから応えた。
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