第二章
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「宜しければ父とお会いしてくれますか」
「私達の父と」
「お父上は何処におられる」
ムーサーは娘達に聞き返した。
「それで」
「この近くの家です」
「そこに暮らしています」
「そこまで私達が案内しますので」
「どうかいらして下さい」
「それでは」
ムーサーは娘達の言葉に頷きそのうえで同胞と共に家に向かった。この道中でムーサーは彼の名前をはじめて知った。
「ハールーンというのか」
「そう、そして」
「父と母が同じということは」
「私達は兄弟だった」
「しかもわしの方が後に生まれたということは」
それはだった。
「わしが弟になる」
「その様で」
「ではこれからは兄者と呼ばせてもらいます」
ムーサーは兄のハールーンにあらたまって応えた、口調も物腰も変わった。ハールーンの方が小柄で身体も痩せているが頭の回転と喋りは上手だと思った。
「ではこれより」
「兄弟としてやっていこう」
「そうしましょう」
こう話した思わぬ運命の再会だったが二人はこれもアッラーのお導きだと喜んだ。そうしてであった。
二人は共に娘達の父親に会った、彼は二人を見てすぐに言った。
「ふむ、そなた達にそれぞれ娘達を妻にやろう」
「そうしてくれるのですか」
「我々に娘さんを預けてくれますか」
「そうする、ただしだ」
娘達の親は二人にこうも言った。
「そなた達は預言者になる器と見た」
「我々が預言者に」
「まさか」
「わしにはわかる、そのためにはそなた達はここに八年の間留まりだ」
娘達の父親つまり彼等にとって義父になる者の家にというのだ。
「そうして仕えてもらいたい」
「そうすればですか」
「我々はそれぞれ妻を得られ」
「預言者となる」
「そうなるのですね」
「そうだ、それでどうするのか」
義父は二人にあらためて問うた。
「この度は」
「口の立つ兄上に会えたのもアッラーのお導きなら」
ムーサーは義父にこのことから話した。
「エジプトを逃れここまで来たのもアッラーのお導き」
「それならだな」
「わしに異存はありません」
「私もです」
ハールーンも応えた。
「それならばです」
「わしに八年間仕えるな」
「父上になられるなら当然のことです」
仕えることもというのだ。
「ですから」
「そうか、ではな」
「はい、これよりです」
「宜しくお願いします」
こうしてだった、二人は義父に八年仕え遊牧の暮らしを送った。それからそれぞれの家族を連れて荒野を旅している時に遠くの火を見てそこに向かうと灌木の茂みがひとりでに燃えていてそこから声がして言われた。
「我こそは汝達の主である」
「まさか」
「アッラーですか」
「アッラーよりつかわされたのだ」
一人の極めて位の高い
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