第二章
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それがバグダート中のものになってだ、ハールーンはまた言った。
「この状況はな」
「バグダート中で行うとなると」
「少し行き過ぎか」
そうなっているのではと言うのだった。
「どうもな」
「では」
「いや、どうもだ」
ハールーンはどうかという顔で述べた。
「もうすぐ終わりそうだ」
「そう思われるからですか」
「うむ、そんな気がするからな」
世界中から集めた珍味を贅沢に味付けした料理を食べつつだ、ハールーンは相伴しているジャアファルに答えた。勿論マスルールも一緒だ。
「だからだ」
「ここはですか」
「あと少しならな」
それならというのだ。
「放っておく」
「そうされますか」
「だからおそらくだ」
ハールーンは今度はマスルールを見て述べた。
「お主の仕事はない」
「左様ですか」
「だから安心して見ておくのだ」
「御意」
「さて、それでだが」
さらに言うハールーンだった。
「異教徒達の国だが」
「ビザンツですね」
「今はどうしている」
「はい、今は静かですが」
それでもとだ、ジャアファルはハールーンに真剣な顔で述べた。
「やはりです」
「油断はだな」
「出来ないかと」
そこはというのだ。
「ですから」
「わかった、ではだ」
「何かあれば」
「すぐに軍を出す、その時はだ」
「カリフもですね」
「自ら軍を率いてだ」
そうしてというのだ。
「戦う」
「そうされますか」
「その時は留守を頼むぞ」
「わかりました」
確かな顔と声でだ、ジャアファルはハールーンの言葉に頷いた。そうして法学者達の議論を見守りつつ他の政にもあたるのだった。
法学者達の議論は続いていた、だがここでだ。一人の法学者が他の法学者達に対してこんなことを言った。
「コーランを読めばだ」
「コーランをか」
「それをか」
「そうだ、はっきりとだ」
まさにというのだ。
「書かれているではないか」
「あの書に!?そういえば」
「そうだった」
ここで法学者達は皆気付いた、彼等がムスリムの中で最もコーランを読み込んでいて細部まで知っているからだ。
「ジンはコーランに出ている」
「既にな」
「もうコーランに出ているなら」
「それならだ」
「コーランに間違いは書いていない」
イスラムの教えの根幹を為すものだ、コーランは無謬のものでありそこに書かれていることで誤りはないのだ。
「それならば」
「絶対にだな」
「コーランにジンが出ているのだ」
「ではジンは存在している」
「間違いなくな」
「そうなる、コーランに過ちはない」
最初に言った法学者は言い切った。
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