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麗人の戦い
第五章
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「堤を壊し」
「そしてか」
「そのうえで、です」
 まさにというのだ。
「この危機を乗り越えましょう」
「今堤を壊せばか」
「それで危機から免れます」
 こう言ってだ、即座にだった。 
 トゥラベカは今度は軍勢を率いて川の上流に向かった、そうしてその川の堤を築いている軍勢を一気に退けてだ。
 堤を壊した、これで川の流れが元に戻ってだった。
 トゥラベカはまたしても買った、だがこのことは同時にサルタンにとっては再度の敗北だった。それでだった。
 遂にだ、サルタンは苦い顔で言った。
「今回も敗れた、これではだ」
「最早ですか」
「諦めるしかない」
「そうお考えですか」
「兵の士気はこの度の負けで大いに落ちた」
 先の夜襲でも相当に落ちたがそれに加えてだった。
「だからな」
「それで、ですか」
「この度は退き」
「そのうえで」
「戦を終わらせる」
 こう言ってだった、サルタンは止むを得なく軍勢を退かせた。これでマンギート族もトゥラベカも難を免れたが。
 トゥラベカはここでようやくといった感じでだ、父にこう言ったのだった。
「これで私もです」
「安心出来たか」
「はい、私に負ける様では」
 それではというのだ。
「私の伴侶に相応しくありません」
「サルタンは軍略でそなたに向かったがな」
「その軍略で敗れましたね」
「一騎打ちでは勝てないと見て軍略で挑んだが」 
「しかも大軍で。大軍を揃えるだけでも凄いことですが」
 それでもと言うのだった。
「しかしです」
「その大軍を使ってもか」
「負ける様では」
「そなたの伴侶足り得ないか」
「はい、ですから」
 それでと言うのだった。
「私はです」
「サルタンのハーレムに入らずに済んでか」
「よかったです」
「そうか、では何時かそなたを破る者がいれば」
「私は喜んで」
 微笑んでだ、トゥラベカは父である族長に話した。
「その方の妻となりましょう」
「わかった、では何時かな」
「そうした方がですね」
「そなたの前に現れることを祈ろう」
「そうして頂けると何よりです」
「ではな、これより祝いの宴を開く」
 戦に勝ったそれをというのだ。
「そなたも出るな」
「はい、そうしてです」
「今は勝ったことを喜ぶか」
「そうさせて頂きます」
 トゥラベカは父に笑みで答えた、そしてだった。
 宴に出て酒を飲んだ、すると一口飲んだだけで。
 トゥラベカは眠ってしまった、族長である父はそれを見て酒なら誰でも娘に勝てると笑って言い部族の者達も笑って応えた。
 やがてトゥラベカは自分に勝った若者と結婚し部族を栄えさせた、だがその若者が彼女に何で勝ったのかは知られていない。しかし彼女に勝った者はいる、このことは紛れもない事実であり強勢
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