第四章
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「その為碌に見えず」
「どうなっているのかもか」
「わかりませぬ」
「くっ、ではじゃ」
それならとだ、サルタンは歯噛みして言った。
「どうしようもないか」
「最早命を伝えることも」
「ではじゃ」
「ここはですな」
「退くぞ」
それしかないとだ、サルタンは歯噛みしつつも述べた。
「全軍にその笛の音を伝えよ」
「わかりました」
「逃げられる者だけ逃げよ」
それしかない、こう考えての言葉だった。
「ここはな」
「さすれば」
「してやられたわ」
サルタンは歯噛みしたままでこうも言った。
「まさか夜襲をしてくるとは」
「思いませんでした」
「このまま勝てると思ったが」
「そこを狙われた様です」
「全てはあの女か」
サルタンにはわかった、このことがトゥラベカの考えと采配によるものであるとだ。
「恐ろしい女だ」
「ただ武芸に秀でて美しいだけでなく」
「采配も得意か」
「その様ですな」
報を伝える者も歯噛みしていた、セルジューク朝はこの夜トゥラベカの夜襲によって散々に破られた。
そうしてだ、何とか軍勢をまとめるとだった。
軍勢の二割はやられていた、その状況にサルタンは苦い顔になって軍議の場で述べた。
「普通に戦ってはな」
「そうしてもですな」
「勝てぬ」
「そうした相手ですな」
「侮っておった」
このことを認めるしかなかった、彼自身も。
「こうなっては余も一切容赦せずだ」
「攻めて」
「そうして降す」
「そうされますか」
「川をせき止めよ」
こう将達に告げた。
「よいな」
「川をですか」
「そうしてですか」
「今度は攻めますか」
「そうする、川をせき止めその流れを変えてな」
そしてというのだ。
「敵の水を断ってじゃ」
「その川の水を敵の軍勢にぶつけ」
「そうして勝ちますか」
「そうしますか」
「うむ、そうする」
こう言ってだ、サルタンはすぐに川の水をせき止めにかかった。そうしてマンギート族そしてトゥラベカに今度こそ勝とうとした。
だがここでだ、川の水が減ったのを見てだった。トゥラベカは父である族長に対して再び言ったのだった。
「敵は今度は川の水を止めてきました」
「何っ、水をか」
「はい、そしてです」
トゥラベカはさらに話した。
「その水を我等にぶつけて攻めるつもりです」
「水攻めか」
「そうしてくるかと」
「それはまずい」
族長も娘の話を聞いてすぐに剣呑な顔になって述べた。
「どうにかしなければ」
「はい、即座にです」
「すぐにか」
「川をせき止めている堤の方に向かい」
そしてというのだ。
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