何度でも蘇る士郎くん!
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なく、あくまで彼女の存在が昇華されたものがその宝具の正体だ。
その効果は対象や周囲を回復し、バッドステータスや持続ダメージの類を解除する、治癒という概念の極限である。霊核の欠片でも残っていれば戦闘不能状態となったサーヴァントの復活も可能であり、それを単一の個に力を集中させればヒュドラ毒すら例外なく浄化する。
本来のヒュドラ毒ならそれも不可能だった。だがその毒はサーヴァントの宝具と化していた故に効果は激減している。だからこそ治せた。
だがその意識が復活する事はなかった。刻まれた衝撃は魂をも全損させている。それを治した所で、一度壊れたという事実が消えた訳ではないのである。
アイリスフィールは、ひゅ、と掠れた吐息を溢し、士郎を抱き締めた。
「――――」
槍兵が馳せる。深紅のマントや宝石などの装飾を剥ぎ捨て、竜胆色の戦装束のみを纏った姿で。
真紅の呪槍が担い手の秘めた激情に呼応して脈動していた。担い手の双眸は据わっている。滾る殺意と憤怒に空間が歪んで見えるほどだ。音を置き去りに、残像を残し、空気の壁を突破して光に手が届くか否かの神速で走る。
マスターの状態を、パスで繋がるが故に感じていた。白い光が煌めいたのを背中に感じても、最悪の結末が脳裡を過ったのを拭えない。
最高のマスターだ。実力、人格、環境。そんなものは関係がない。何故なら既に、生前を通して得られず、英霊に至ってすら記録にないほどに、心の底から槍を捧げ主だと認めていたのだから。
騎士が、忠誠を。戦士が、敬意を。男が、友情を感じた。故にその身を脅かす存在を断じて捨て置ける訳がない。
憤怒は、己へ。
何が騎士、何が番犬か。不意討つ下郎に気づきもしなかった間抜けがと罵る。
殺意は、敵へ。
殺す、問答は無用。あらゆる主義主張など聞く耳持たぬ。今殺す、すぐ殺す。
二十q以上離れていた狙撃地点に辿り着くのに僅か一秒と半。視認したのは二メートルを超す痩身の狙撃手。布が頭部から膝下まで垂れ、風に靡いていた。赤黒い染料で染め上げられた肉体、手にしているのは大弓。宝具解放直後の硬直はすぐさま解かれ、槍兵を迎撃する体勢が整っていた。
「――雄ォォオオラァァッッッ!!」
切り立った崖の上。充分な加速を以て正面から突進する。朱槍が空間を貫きその摩擦で火を纏った。
弓兵は大弓で槍を受ける。その感触、手応えで感じるのは己を超える膂力。だが、それを凌駕する手立ては此処へ到達するまでに打っていた。
筋力を強化するルーンが起動する。刹那の間に繰り出されるは三十を超える刺突の雨。
怒れる猛犬の牙は力のみならず、技もまた槍の極みだ。だが真紅の弓兵も負けてはいない。弓という接近戦に不向きな武装で防禦に回り、只管に捌き切る。薙ぎ、撃ち下ろし、突き
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