何度でも蘇る士郎くん!
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ら吹き出す。眼球がぐるりぐるりと眼窩を回った。ぴくりとも動かぬようになるのに二秒も掛からなかった。
「ッッッ!! 指揮を引き継ぐ! 余の声に従え英霊達よ!」
あの、鋼のような男の姿が、跡形もない。絶句してしまうのを無理矢理嚥下し、薔薇の皇帝だったネロが吼える。
「ランサー、セイバー、オルタ、アーチャー、アタランテは狙撃手に仕掛けよ! アサシンはキャスターを護衛し、キャスターはシェロの治療だ! 急げ!」
マシュは――とネロは盾兵のデミ・サーヴァントに指示を出そうとして唇をきつく噛み締める。
士郎が。この男が、余りにも優れていたが故の弊害が出ていた。心の拠り所になれ、信頼出来、縋れる存在。依存していた。頼りきってきた。そして盲信していた。彼がいれば大丈夫、彼がいたら絶対に勝てる、彼は絶対に死なない。
それは戦いを恐れる極普通の少女だったマシュの、極々普通の帰結だった。信頼し、盲信し、依存していた、心の拠り所にして最も慕っていた存在が死すら生温い責め苦に晒されているのだ。縋りつき、その体を揺する。少女の悲痛な叫びが響き渡った。
「先輩!? 先輩! へ、返事をしてください、先輩――!?」
生身の人間である海賊らは立ち尽くす事しか出来ない。
涙に濡れた顔で少女は錯乱していた。
士郎はぴくりとも反応せず、見開かれた双眸の中を眼球が暴れ、今に飛び出ようとしている。止めどなく出血し、血の泡を吹き、時折り激しく痙攣していた。
ネロは素早くマシュの許に駆け寄り、その腕を取って無理矢理立たせると、手加減もなく頬を平手で張った。厳しく、凄まじい怒気と威厳を発しながら言い聞かせる。
「聞け! マシュ・キリエライト!」
「ひっ、」
「そなたはシェロの楯であろう!? よいか、是が非でもシェロを守護せよ! 死守するのだ! キャスターが治療している間、アサシンとそなたで守り切れ! 今! シェロの命はそなたの力に掛かっていると肝に銘じよ! よいな!?」
士郎の命が自分に掛かっている――それに、マシュの瞳に理性が戻った。気力は戻らずとも、その意思が整う。はいっ! 涙を拭って無理矢理に楯を構えたマシュは鉄壁の城塞として身構えた。
その背に護るべき人を。そしてその大切な人を治してくれるはずの女性を。赤いフードの暗殺者はそれを見て、冷徹に最善の位置を取る。正面は盾兵が守る、ならば暗殺者は他の襲撃があっても対応できるように距離を置いた。
「開け、天の杯!」
聖杯の嬰児が宝具を開帳する。自身を庇ったが為に斃れた平行世界の義理の息子を救わんと。
「『白き聖杯よ、謳え』――!」
愛と母性が聖杯と結び付き、真摯にして清らかなる祈りを一時的に叶える。願望器としての機能では
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