オルフェノクの使い魔18
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アンリエッタは、客席でバレたリッシュモンと対峙していた。役者に化けていたメイジたちは、新設されたばかりの銃士隊の一斉射を受けてハチの巣になっている。
「わたくしを可愛がってくれたあなたが、何故こんなことを? あのときの優しいあなたは偽りだったのですか?」
「主君の娘に、愛想を売らぬ家臣がおりますまい。そんなこともわからぬ小娘が王座に抱くぐらいなら、アルビオンに支配された方が、まだマシというもの」
(『将を射んとせば先ず馬を射よ』…まさにその言葉そのままでしたか……
となると、彼が持ってきた報告書に記されたあれも、本当のことなのかしら?)
「そのアルビオンの支配下のもとであなたが政治をふるうというのでしょう?」
「ッ!?」
リッシュモンの顔に明らかな動揺が浮かんだ。
「アルビオンに情報を横流しにする代わりにトリスティンを治める…」
(まさか、本当のことだったとは…)
「な、何故、そのことを…」
「最後の通告です。おとなしく降伏しなさい。それがあなたの身のためです。今ならまだ、トリスティンの法で裁かれることができます」
「陛下、あなたは優しいですな。その優しさ、時として捨てることを学んだほうが良いのでは?」
そう呟くとゆっくりと歩き始めた。
「あなたがお生まれになる前よりお仕えした私から、最後の助言です」
リッシュモンは舞台の一角に立つと、足で床を叩いた。すると、落とし穴の要領で、床が開いた。
「あなたは詰めが甘い」
リッシュモンはまっすぐに落ちて行った。あわてて銃士隊が出口を探そうと行動を開始しようとしたが、それをアンリエッタが止めた。
「…わたくしは優しくなどありません……」
(私に捕まっておくべきだったのですよ。リッシュモン…おじさま。
その穴にはすべての水を従える龍が、あなたを待っているのだから……)
リッシュモンが消えた穴にそう呟くと背を向けた。
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リッシュモンは地下通路を進んでいた。が、その眼前に人影が立ちふさがった。
「おやおや、リッシュモン殿。変わった帰り道をお使いですな」
人影の正体が、アニエスだと知ると、強張ったリッシュモンの表情に安堵の笑みが浮かぶ。相手がメイジで無い以上、どうとでもなるという顔だ。
「どけ。私は今忙しいのだ。貴様と遊んでいる暇はない」
銃口を向けるアニエスに対し、リッシュモンは杖を突き付けて告げる。だが、アニエスは一歩も引かずに毅然とした態度で告げた、今の自分を突き動かすのは、アンリエッタへの忠誠心では無く、そこにあるのは大切なものを奪った者への復讐心だ
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