オルフェノクの使い魔18
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て行ってしまった。
「……」
「……」
アンリエッタによってランプがつけられた部屋は静かだった。ウェールズもアンリエッタも、何かを言おうとしているのだが、それを音にする前に口を閉じてしまう。
あの夜以来、会うのは初めてだ。お互い、話したいことがないわけではないのだが、ウェールズはあの時、アンリエッタを拒絶することをいった手前、こうして二人きりにされて、話す言葉が見つからなかった。
それは、アンリエッタも同じだった。
「あ、あの…今まで、元気でしたか?」
「あ、ああ。元気だったよ」
「そう、ですか…」
さきに声を出すことができたのはアンリエッタだった。
一度声が出るとあとは、簡単に話すことできた。
「ボクは、魔法が使えなくなった…」
「え?」
「サイトが言うには、副作用の一環らしい。そのかわりにボクは、この力を得た」
そういうと、ウェールズの顔に灰色の模様が浮かび上がり、イーグルオルフェノクへと変化した。
「ッ!?」
「怖いかい? この姿が。ボクは気に入っているんだけどな。新しい自分の証として」
「新しい自分?」
「ある娘がボクに言ってくれた。ボクが女になったのも、魔法が使えなくなったのも、この力を手に入れたのも、すべて神さまが生まれ変わるチャンスをくれたんだって」
イーグルオルフェノクはウェールズに戻った。
「君はまだ、サイトのことを憎んでいるみたいだね」
「……」
「沈黙は肯定ととらせてもらうよ」
何も答えないアンリエッタにウェールズは特に怒るわけでもなく語りかける。
「ボクを殺したことで許せないというのなら、その憎しみは消してほしい。あのときは、それ以外の方法がなかった」
そう言ってその時の状況を話した。きっと、サイトは弁護など望んでいないだろう。でも、大事な友を大事な妹が、自分が原因で恨んでいるのは我慢できなかった。
「あとで聞いたんだけど、アルビオンは何らかの方法で水が管理されているから下手に干渉すると、アルビオンが崩壊しかねなかったらしい」
ウェールズが話し終わると、再び、沈黙が部屋を支配した。しかし、その支配もすぐに終わった。
「彼は今、罪滅ぼしをしようとしています」
「罪滅ぼし?」
「彼は、近々起こるであろう戦争でトリスティンが勝てるようにするために奔走しています」
「へぇ」
(ここ最近、彼がよくいなくなるのはそのためだったのか…)
友が人間だった時の自分の最期の願いをかなえるために頑張ってくれていることがわかり、嬉しく感じた。
また、それと同時にアンリエッタが勘違いをしていることにも気付いた。
「サイトは、罪滅ぼしをしようなんて考えていないと思うな」
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