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オルフェノクの使い魔
オルフェノクの使い魔17
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たのでしょうか?」

「人の心はその者にしかわからないのですので、私からは何とも」

アンリエッタは少し思案していると、扉の向こうから馬車の準備が整った事の報告が聞こえた。アンリエッタはマントをまとい、杖を手にした。

「…わたくしは、これから出なければなりません。この件に関してはそれからになりますわね」

「私に策がございます」

ミズチは唯一露出した口に薄い笑みを浮かべた。アンリエッタはその笑みをじっと見つめてから呟くように言った。

「聞きましょう、その策を。知将『水君』のミズチ」

「かしこまりました……」

ミズチは恭しく跪き、自分の策を話し始めた。
マザリーニの考えたミズチの設定は『幼少期、火事からアンリエッタ姫を救うため水のメイジでも治すことのできないほどの大火傷を全身に負い、それを隠すために肌の露出を控えており、幼少より卓越した頭脳を持ち、この戦争に勝利の風を吹かせるためにアンリエッタ自ら、招集した知将』というもので、二つ名の『水君』は、いかなる水であろうと操り服従させる『水の君主』を略したものである。

「いいでしょう。その策に乗ることにします。あなたの要望も飲みましょう。
条件を付けてですが」

「ありがとうございます」

自分に背を見せ、部屋を出て行こうとする男の背中にアンリエッタは思わず杖を向けた。あの男は自分の最愛だと信じた人を殺した。しかし、呪文を最後まで詠唱することはできなかった。
自分はあの男を殺したいと思う。あの男は確かに自分の最愛だと信じた人を殺した。だが、その人の心を救い、その人に新たな生を与えたのもあの男だった。

「私は、どうすればよいのでしょう……」

自分以外誰もいなくなった執務室でその声は小さく響いた。
外へ向かうため、アンリエッタは杖を強く握りしめ、部屋を出た。


――――――――――――――――――――――――――――


「ふぅ〜」

ウェールズはゴミを捨て、一息ついた。豪華なイスに腰掛け、公務を行っていた頃が懐かしくないと言えば、ウソになる。しかし、彼女は、今の生活に不満を覚えているわけではない。やったことのないものや、知らなかったことに触れる喜びに満ちた生活をウェールズは満足していた。

「さてと、もうひとガンバ…おっと!?」

「キャッ!!」

これからの仕事に向かうため、気合を入れて店に戻ろうとしたウェールズに誰かがぶつかった。
ぶつかった相手は、フードをかぶった女だった。

「すまない。怪我はないだろうか?」

ウェールズは慌てて女を助け起こした。女はウェールズの手を借りて立ち上がると、慌てた声で尋ねる。

「あの、この辺りに『魅惑の妖精』亭というお店を知りませんか?」

「それならここ…
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