オルフェノクの使い魔16
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死者たちは、冷たい躯へと戻った。
竜巻に身をさらしたため、身体中傷だらけのサイトは傷を心配するルイズたちにそれぞれ仕事を与える。タバサにはシルフィードの治療、キュルケとシエスタには死者たちの埋葬を、ルイズには精神力の使いすぎで意識を失ったアンリエッタを見ているように言いつけた。
サイトはウェールズの隣りに腰を下ろした。そして、その頬に触れたとき、何の奇跡か、ウェールズのまぶたが弱々しく開いた。
「ウェールズ?」
「…やぁ、サイトか? 声が変だね、風邪でもひいたのかい?」
弱々しく、消え入りそうな声だったが、さきほどまでのものとは違うウェールズの声だった。
「おまえたちがあんな大技使ってくるから、全力でブレスをつかったせいで、喉がかれただけだ」
「それはすまないことをした…
こんな、腐った死体なんかに気にされたくないか……」
「誰が腐った死体だ? おまえは、俺の友だちのウェールズだろうが」
「……ありがとう」
そう言った後、ウェールズは起き上がろうとしたため、サイトは手を貸した。そのとき、サイトはウェールズの胸に紅い染みが浮かび上がってきたことに気づいた。偽りの生命によって閉じていた傷が開いたのだ。サイトはすかさず、前回同様に血に触れた。血はそれ以上広がることなく、ウェールズの中へと戻っていった。
「ウェールズさま」
意識が戻ったらしいアンリエッタがルイズを伴ってやってきた。
「アンリエッタ、君にも謝らなければならないね。すまなかった」
「いいえ、いいえ、ウェールズさまに謝られることなど、何も!」
首を激しく横に振るアンリエッタに笑みを浮かべ、ウェールズは優しい声で話す。
「アンリエッタ、愛しい我が従妹、君は私との恋愛ゲームなど忘れて、本当の愛を知るべきだ」
「恋愛ゲームなんて!」
「ゲームさ、私が一国の皇子として閉鎖的な生活から逃避したいと丁度よくいた、歳の近い姫に恋する自分に酔っていたように、君も遠くにいる皇子に恋する悲劇のヒロインに酔っていたんだ。
もう、このゲームは本当にお仕舞いだ。私には、君のことを大事な妹としか思えない」
辛い言葉を並べるのもこの愛しい妹のため、逃避したままでは彼女がだめになってしまう。ウェールズにとってそれはとても耐えがたいことだった。
「……」
「今の私には、君よりも最初で最期の友だちであるサイトの方が大事なんだよ」
「この男は、ウェールズさまを!!」
アンリエッタの凶弾にサイトの顔がわずかにこわばる。
「私がやれと言ったんだ。だから、サイトも気にしなくていい」
「……もとより、気にしてない」
「そうか…。アンリエッタ、私と約束してくれ、良き王となると」
「…はい」
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