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オルフェノクの使い魔
オルフェノクの使い魔10
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「色々あって、考えに考え抜いたすえに自主的に除隊して、世界でも見て回ろうと思ってた」

「それって、脱走?」

「ああ、そうとも言うな」

「なんで!? だってがんばって手に入れたんでしょ?」

「…色々あったんだよ」

「……」

「……」

「あのね、私ね、立派なメイジになりたかったの。別に、そんな強力なメイジになれなくてもいい。ただ、呪文をきちんと使いこなせるようになりたい。得意な系統も分からない。どんな呪文を唱えても失敗するなんてイヤ。
小さい頃から、ダメだって言われてた。お父さまも、お母さまも、私には何も期待してない。クラスメートにもバカにされて。ゼロゼロって言われて。
先生や、お母さまや、お姉さまが言ってた。得意な系統の呪文を唱えると、体の中に何かがうまれて、それが体の中を循環する感じがするんだって。それがリズムになって、そのリズムが最高潮に達したとき、呪文は完成するんだって。でも、そんなこと、一度もない…」

ルイズは、落ち込んでいるらしい。
そういえば、今日の授業でいじめにあっていたとキュルケが、教えてくれたのを思い出し、サイトはどうしたものかと少し悩んでから口を開いた。

「おまえは、まだ出来る。
誰かに頼りにされているうちは、まだ可能性がある証拠だ。本当に無能で何にも出来ないやつなんかに、誰も助けを求めない。だが、おまえはオヒメサマに頼られた」

「……」

「頼ってくれるヤツのために努力を止めるな。それは裏切り以外何ものでもない」
(こんなこと、言えた義理じゃないよな…)

今度こそ、もう話はおしまいだと、サイトはルイズに背を向けて目を閉じた。
ルイズはその背中を眺めつつ、考える。自分はこの使い魔のことをよく知らない。

(なんなんだろう…)

平賀サイトという人物は、ルイズの今まで見たことのないタイプだった。ワルドの正体にいち早く気づき、皇太子にまで認められた洞察力、オスマンに認められるほどの実力。
それ以上のものをまだ、隠しているかもしれない。

「あんた、本当に何者なの?」

底が見えない恐さ、それ故の懐の深さ、さり気ない温かさ。ルイズは、サイトの背中を眺めて、自分の中でもてあましている感情が何なのか、わからなかった。

(でも、いやじゃない…)

ルイズはサイト背中に張り付き、目を閉じた。そんなルイズを薄目でチラッと見てからサイトは再び目を閉じた。


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