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オルフェノクの使い魔
オルフェノクの使い魔8
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たちは最後の客人たちに酒を勧め、料理を勧め、冗談を言った。ルイズはその空気に絶えられなくなり、ホールを飛び出していった。ワルドも、それを追って出て行った。
サイトはその姿を視線の片隅に置きつつ、自分に話し掛けようと近づいてくる貴族からさりげなく距離をとり、壁に背を預けて年代もののワインをあおり、それからグラスを下に向けた。当然、中に注がれたワインは、床に落ちるはずだが、ワインは床すれすれでとどまり、貴族たちに気づかれることなくパーティ会場を蛇のようにシュルシュルと這って出ていった。

(とりあえず、ルイズの護衛はアレでいいだろう。最悪、俺がたどり着くまでは持つはずだ)

サイトに興味を示したらしいウェールズが近づいてきた。サイトは一瞬逃げようかと考えたが、あえてその場に留まった。

「楽しんでいるかい?」

「まったくもって楽しんでない」

「それは寂しいな」

「死にたがりどもと飲んで楽しめるのは、同じ死にたがりだけだ」

いつの間にか、パーティに参加している貴族たちの視線はサイトとウェールズに集まり、耳は二人の会話に集中していた。

「だいたいにしておまえたちは名と誇りを背負いすぎだ」

「背負いすぎ?」

「名と誇りが、戦況を逆転させる術を封じ込めたからこそ、今日という日を迎えたんじゃないのか?」

「……」

「誇りある我らが卑怯な手は打てない。そう言ってこの戦況を生み出し、背に腹はかえられなくなって、ようやく、空賊に化けて物資を奪うっていう卑怯な手をつかった」

「…名と誇りは我々のすべてだよ」

「そのためなら、死んでもかまわない?」

「ああ」

当然のように頷いて見せたウェールズにサイトは思わず、ため息をついた。
オルフェノクは、誰しも『死』を恐れている。それは何故か? 答えは簡単だ。一度『死』を体験したことがあるからだ。
サイトもそれに漏れず、『死』に対する恐怖心は高い。それ故に簡単(サイトの視点から見て)に、『死』を受け入れているウェールズたちが、信じられなかった。

「くだらない。死んでどうする? 気高い魂をやつらに見せつける? 見るわけがない。勝者は勝利の美酒に酔いしれ、敗者の骸で杯を交わし、自分たちの手柄を肴に、敗者をあざ笑う。それが戦であり、戦争だ。
勝つことを忘れた兵より、畑のカカシの方がはるかに役に立つ」

「我々にどうしろと言いたいんだね。きみは?」

「勝つために、負けるために戦うな。生きるために戦え、生きるために名を、誇りを捨てろ」

「できるわけがないだろう」

「名や誇りじゃ人は強くなれない。欲を持て。
もっと美味いものが食べたい、だからこんなところで死ねない、という食欲。
もっといい女を抱きたいだからこんなところで死ねな
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