オルフェノクの使い魔7
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思い出した。
「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。我々にできるのは勇敢な死を連中に見せることだけだ」
「……」
(一人につき、約167人倒せれば勝ちか…)
サイトは、じっとウェールズを見つめている。
ルイズは深々と頭をたれて、ウェールズに一礼した。言いたいことがあるのだった。
「殿下……失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」
「なんなりと申してみよ」
ルイズは目を閉じ、高鳴る心臓を抑えるよう数回、深呼吸をした。こうしなければ、声が震えてしまいそうだった。
「わたくしにこの任を仰せ付けられた際の姫さまのご様子。そして、さきほど手紙への接吻。お二人は…」
「恋仲だったと言いたいのかね?」
「そう確信いたしました。ですから! 殿下、亡命なさいませ! トリスティンに亡命なさいませ!!」
ワルドがよってきて、すっとルイズの肩に手を置くが、ルイズの剣幕はおさまらない。
「お願いでございます! 私たちと共に、トリスティンにいらしてくださいませ!」
「それはできんよ」
ウェールズは笑いながら言った。ルイズはサイトにすがるような視線を向けた。この口が達者で、大胆不敵で、ウェールズに気に入られたらしいこの使い魔が説得すれば、聞いてくれるかもしれない。そう思ったのだ。しかし、サイトは下船してから一度も口を開いておらず、今回も黙っているだけだった。
「きみは、正直な娘だな。ラ・ヴァリエール嬢。まっすぐでいい目をしている。
だが、そのように正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい。
しかしながら、亡国への大使としては適任かもしれぬな」
そこまで言うと、ウェールズは笑みを浮かべ、ルイズの頭を優しく撫でた。
「そろそろ、パーティの時間だ。きみたちは、我らが、国が迎える最後の客だ。是非とも出席してほしい」
サイトとルイズが外に出た。ワルドは居残って、ウェールズに一礼した。
「まだ、なにか御用がおありかな? 子爵殿」
「恐れながら、殿下にお願いしたい議がございます」
「なんなりとうかがおう」
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