オルフェノクの使い魔2
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のこの姿を見て平然としていた者はいない。それを装う男もいたが、欲望のこもった目で自分を見ていた。だが、隣りに座る男からはまったくそれを感じない。
「あたしの二つ名は『微熱』、松明のように燃え上がりやすいの…あたしは、あなたに恋してしまったの……いけないことだとも分かっているわ。でも、この燃え上がりやすい心を抑えられないの」
「なぁ」
「何?」
「外にお友だちがきてるぞ」
「へ?」
サイトが背後にある窓を親指で指差し、キュルケが振り向いた瞬間、窓が叩かれた。
そこには恨めしげに部屋の中を覗く、一人の美男子がいた。
「キュルケ…待ち合わせの時間にこないからきてみれば…」
「ペリッソン! ええと、二時間後に」
「話が違う!」
キュルケはうるさそうに胸元から取り出した杖を振った。
ロウソクの火が意思を持ったかのように動き、窓ごと男を吹っ飛ばした。
「まったく、無粋なフクロウね」
「次のお友だちがきたぞ」
「キュルケ! その男は誰だ! 今夜は僕のところで過ごすんじゃなかったのか!」
「スティックス! ええと、四時間後に」
「そいつは誰だ! キュルケ!!」
怒り狂いながら部屋に入ってこようとする少年に再び杖を振り、再び意思を与えられた火が少年を吹っ飛ばした。
「キュルケ」
「…何? ダーリン」
「今度は団体様だ」
「また!?」
キュルケは振り向きざまに今まで軽く振ってきた杖を思いっきり振り下ろした。部屋にあるロウソクすべてから火が集まり炎となって窓の外にいるまだ一言もセリフを与えられていない少年たちを吹っ飛ばした。
「……」
「……」
「と、とにかく愛しているのよ! キャッ」
サイトにキスしようと迫ってきたキュルケをサイトは逆に押し倒した。
「処女があんまり遊びすぎると酷い目にあうぞ」
キュルケは目を見開き、褐色の肌を紅く染めた。
「どうして分かったのか、か? 簡単だよ。おまえよりも俺の方が場慣れしているだけだ」
逃げられないよう押さえつけ、杖を奪って適当に放る。
「今までは、こうやって迫って適当にキスすれば相手はおまえに夢中だったんだろうが、こっちはそのさきのことを、生きていくために磨いた玄人なんだ」
「ちょ、ちょっと!」
「ここ最近、ずっと禁欲していた上に、中途半端な獲物つかまされて欲求不満なんだ」
「そ、そうだ! そろそろ、戻らないとルイズが心配するんじゃないかしら?」
「今日は外で寝るって言って出てきたから問題ない」
完全に退路は絶たれた。
翌日、キュルケが部屋の外へ顔を出すことはなかった。
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