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オルフェノクの使い魔
オルフェノクの使い魔2
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「名前を聞くときは自分からってよく聞くぞ」

「…君は平民のようだな」

「…貴族になった覚えはないな」

ルイズが慌てて間に入ろうと向かってくるのが見えたが、観客に回った生徒たちが壁となって彼女の行く手を阻んでいる。

「…行きたまえ、平民にまともな応対を望んだ僕が馬鹿だったよ」

「なんだ、自分が馬鹿だって自覚はあるのか」

冷静な態度を装う少年の頬がピクピクと痙攣している。

「穏便に済ませようという、僕の優しい心遣いが分からないのかね?」

「ああ、すまない。そんな気使いをかけてしまったか、気づかなかった。てっきり、このあとさっきの二人とどうやって仲直りしようか考えているんだとばかり思っていたよ」

少年の肩は誰が見てもはっきりと分かるくらいがたがたと揺れ、爪が食い込んで血が出そうなくらいつよく拳を握り締めている。

「よ、よかろう。君に貴族に対する礼儀を教えてやろう……ヴェストリの広場で待つ!! 絶対にこい!!」

そう言い残すと少年は早足で食堂から出て行った。

「俺…まだ了解の返事してないんだけど……ってことはいかなくてもいいってことか?」

そんなことをぼやいていると、ようやくルイズが現れた。

「あんた! 何してんのよ!!」

「振られ男の八つ当たりからメイド少女を救っただけだ。あいつの態度、昔戦ったムカツクやつにそっくりでつい我慢できなくなっちまった」

「つい我慢できなくなっちまった、じゃないわよ!! 何勝手に決闘の約束してんのよ!!」

「そんなに騒ぐな、うるさいぞ」

「誰のせいだろ思ってんの!」

「誰のせいだ?」

「あんたよ!!」

ハァハァと荒い息を吐くルイズに近くの机に置いてあった水の入ったコップを渡すと、彼女は豪快に一気飲みをした。
サイトは周囲を見回し、さっき少年の八つ当たりの被害にあっていたメイドを探すとすぐそばにまだ立っていた。

「大丈夫だったか?」

「は、はい!」

「今回は気まぐれで俺がやったけど、今度からは自分で立ち向かえよ。じゃないと一生あんなのに尻尾振って生きるアホなダメ犬になるぞ」

サイトはルイズを小脇に抱え、少年の指定した場所へ向かうことにした。


―――――――――――――――――――――――――――――


ヴェストリの広場は、魔法学院の敷地内、『風』と『火』の塔の間にある、中庭である。西側にある広場なので、そこは日中でも陽射しが弱く、私闘にはうってつけの場所である。
しかし今は、噂を聞きつけた生徒たちで溢れかえっていた。よく見れば周囲の建物の窓からメイドたちも顔を出している。

「諸君! 決闘だ!」

少年が薔薇の造花を掲げた。それに反応して歓声が巻き起こる。
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