オルフェノクの使い魔2
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雨が降りしきる中、少年は手にした力で初めて人を殺した。
「私の名前は村上峡児。君、名前は?」
男は目の前にいる血で真っ赤に染まった少年に問い掛けた。
「……」
少年は周囲を見回し、自分の足元に血まみれで倒れている男の懐をあさり、財布を見つけ、その中にある免許書を見た。
「ひらが…さいと」
「それは、その人間の名前でしょう? 私が聞いたのは君自身の名前です」
「ない。だから、もう必要のないやつのつかう」
無感情にいう少年に眉をひそめる。
「俺、商品、だからそんなもの必要なかった。でも、今の俺、バケモノ。バケモノには名前が必要」
「君はバケモノじゃない。君は人間から進化したんです。オルフェノクへと」
「オル、フェノク?」
「そうです。私と一緒にきませんか? 仲間が待っています」
「…わかった」
少年は少し躊躇してから、差し出された男の手を取った。
「きょうじ、臭い」
「これはコロンで、臭いのではなく、とても香しい、いい香りなのです」
「…昨日、相手したデブと同じ匂い。やっぱり臭い」
「……」
男は少年を拾ったことを少しだけ後悔した。
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昼になり、サイトとルイズは朝と同様に食堂へ現れた。
「あんた、それで足りるの?」
「まさか」
「文句とかいわないの?」
「文句言ったら増やしてくれるのか?」
ルイズの座る椅子に背を預けて朝同様の質素な食事を食べるサイトは固いパンを食いちぎる。
「昔、あの会社に拾われるまでは掃き溜めみたいなところに住んでたしな。そのころのことを思い出せば、三食食えるだけで満足だ」
「よっぽど酷いところなのね」
「ああ、俺のいたところは特にな…最低最悪の……って飯時にする話しじゃないな。気が向いたら聞かせてやるよ」
サイトは遠くを見るような目で天井を見上げてから再び食事に取り掛かった。
(あそこは…奪い合い、媚び、騙す世界……その世界でオルフェノクになってスマートブレインに拾われて…)
サイトの傍らに置いておいたスープ皿に肉が放り込まれた。
「これも食べていいわよ」
「同情や哀れみならいらないぞ」
「そんなんじゃないわよ。偶然落としちゃったのよ。貴族が落としたものなんて食べるわけがないでしょ」
「…落としたんならしかたないか」
スープの中に入った肉を口に含んだとき、少女の哀と怒りと悲しみの込められた平手打ちの乾いた音と叫び声が響いた。
「その香水があなたのポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ! さようなら!」
サイトはそちらを向くと泣きながら走り去る
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