「その一撃は」
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「うふふ、そんなとってつけた理由は要らないわよ? 助けたいだけって言えばいいのに」
「……アイリさん。そういうのはいいから」
顔を顰めながら士郎は手を振る。微笑ましげな周囲の目から逃れるように眼を逸らし、
そして。
――………。
元より推測は立てられていた。この時代この海域の地形を知悉している訳ではないが、島の配置や気候の変化などの条件が不自然なものであるとは感じていたのだ。
学問として理解しているのではない。豊かな自然と共に生きた人生の経験故に、あからさまなまでに道理の通らない気象の変化が、超常的なものが関わっているが故の物なのだと推理出来た。
まず言えるのは、これが神霊の権能ではないという点。この時代に神霊が現界、復活したとしても全盛期の力など望むべくもないだろう。例えば神霊ポセイドンなどが現れたとしても、ただの人間如きに敗れる可能性も小数点以下の確率で有り得てしまうのだ。本来なら不可能を不可能のまま踏破する星の開拓者だったとしても、覆せない力があったとしても――神秘の薄れたこの時代に現れた時点で、神代ほどの力など望むべくもない。
故にこれは、聖杯によるものではないかと推察する。特異点化の原因である聖杯はこちらが確保しているのだから、出所の異なる聖杯があるのだろう。まあそれはいい。
島から島を探索し、そうして幾つか目の小島にやって来る。そして見つけた。あの女海賊の船である。
相当の痛手を被っているらしい。それもそうだろう、かなり損傷させた船で成した荒業の後だ。船員も、船長も手傷を負っていると見ていい。
しかし、鋭敏に感知する。サーヴァントの気配だ。どうやらほぼ同じタイミングでやって来ているらしいが――サーヴァントの数が多い。隠れ潜んで気配を殺し目視する。その中に一度は屠った狩人の姿があるのに眼を見開く。
別口で召喚されたのだろう。あれは霊核を確実に破壊したのだから。となると、こちらの存在が露見している可能性はない。
しかし隙がなかった。三騎ほど強力なサーヴァントがいる。下手に仕掛ける賭けはまだ犯せないだろう。同じ顔立ちの少女騎士……いや待て、あれは記憶にある。――そうだ、反転する前の己の記憶だ。冬木、だったか。あの時は狂化していたとはいえ、朧気に覚えている。
あのセイバーが、二騎。あの黒い剣士は同一存在の別側面か。そしてあの槍兵。神性を持つ忌々しい英霊は――冬木の時とは桁外れの力を感じてしまう。ともすると、一騎討ちでも相当苦戦するだろう。
それとは別に、冬木での赤い弓兵もいる。生身の人間、マスターらしき男は弓兵と同じ顔だが、子孫か何かなのだろうか。あの男もかなりの戦上手である。力量は蹴散らせる程度だが、後衛に回られると厄介
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