「その一撃は」
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る。その海賊フランシス・ドレイクからだ。間違いなく聖杯を所有しているぞ』
驚愕に値する情報に、士郎達は厳しい眼をドレイクに向けた。聖杯を持ってるのか? と。
ドレイクはなんのこっちゃと惚け、しかしすぐに思い至ったのか懐から黄金の杯を取り出した。ああこれか、と。どうやら彼女は、この特異点の聖杯ではなく、この時代にあった聖杯を手に入れていたらしい。なんでも復活したポセイドンを、海の神を名乗る気に食わない奴らという事で、アトランティスごと海の底に沈めたらしい。
は? と珍しく士郎は呆気に取られる。カルデアやら人理焼却やらよりも、余程のオカルトだった。人間が……神霊を下して聖杯を奪っただと? なんだそれはふざけてるのか神霊仕事しろ。
だがまあ、聖杯はドレイクのものだと納得するしかない。それに特異点化の原因となる物ではないのなら、カルデアが無理に回収する必要はないと言えた。まあ貰えるなら貰うが。
「だぁから、このアタシがただでお宝を譲る訳ないだろう? 一昨日来な」
「……ふむ。では物々交換ならどうだ」
「交換? このお宝に釣り合うのかい」
「さあ。それはお前が決める事だ」
「『お前』ね、このアタシに向けて。それに対等にお宝を取引しようたぁ……ハッ、大した胆力だねぇ」
からからと愉快そうに笑うドレイクが、試すように言う。じゃあ見せてもらおうじゃないか、アンタの言うこの杯に見合う宝って奴を――
士郎は時代背景などを思い返し、暫し沈思するとマシュに向けて言った。携帯している調味料を出してくれるか、と。
マシュの楯の裏には、小さな隙間がある。そこには士郎が野戦料理をする際に用いる小道具が格納されたりしている。武器を格納したりするのがいいのだろうが、生憎とそれは間に合っている故に香辛料を入れているのだ。
と、楯の隙間から顔を出したのは、毛むくじゃらな小動物だった。フォウである。付いてきていたのか、と驚く士郎とマシュに、フォウは口に加えていた瓶を渡してきた。
「……まあいいか。ほら、あんたにとって、この上ない宝をくれてやる」
「……、……なんだい、これ」
海賊が絶叫している。ドレイクは目の焦点が合わなくなっていた。
「胡椒だ。瓶一杯の」
「――……は、胡椒……? マジでぇぇええ!?」
ドレイクは絶叫して瓶を取り落とし、驚愕の余り失神した。元々の疲労もあったのだろう。うわああああ! と海賊達も慌てふためいていた。
この十六世紀のヨーロッパでは、胡椒は極めて重宝された香辛料である。同質量の黄金にも勝る価値があった。
士郎は苦笑し、白いキャスターに向けて言う。
「アイリさん、すまないが彼らを治してやってくれるか。流石に重傷者達をほっとくのも寝覚めが悪いし、ドレイクは重要な存在だ」
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