暁 〜小説投稿サイト〜
人理を守れ、エミヤさん!
「その一撃は」
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話



 到達した小さな島、切り立った山の隙間に海賊船が錨を打って、岸壁に停泊しているのを発見する。黒髭が言った。これはフランシス・ドレイクの船であると。
 宝具でもなんでもない、極普通の船だ。神秘性の欠片もない。その海賊船は損傷が激しく、次の航海にはとても耐えられそうもなかった。だが、逆に言えばそれだけであるのも事実。黒髭は骨太な笑みを浮かべて呟いていた。――流石は俺の憧れた星の開拓者……あの化けモンから、たったこれだけの被害で逃げ延びるとは、と。

 士郎は迷った。この時代の、生身の人間であるドレイクと接触してもいいのだろうか、と。挙げ句巻き込んでしまって、死なせでもしたなら被害は馬鹿にならない。ある意味この時代の主役とも言えるドレイクだ、もし死なせでもしたら人理定礎の不安定な特異点にどんな影響が出るか分かったものではない。
 その懸念を黒髭は笑い飛ばした。舐めるなよ、カルデアのマスター。そんな道理、捩じ伏せたからこそのフランシス・ドレイクだ。どこの馬の骨かも分からないサーヴァントを味方にするより、生身のドレイクを味方に付けたほうが万倍心強ぇだろうが。
 これに士郎は当惑した。というのも近代の英雄や偉人は、所詮普通の人間に過ぎない。英霊となりサーヴァントとして召喚されてはじめて戦力となるのが魔術世界の戦いだ。確かにサーヴァントの襲撃から逃げ(おお)せたのは見事だ、しかし神秘を内包しない人間にサーヴァントの相手は不可能なのである。

 間違えてはならない。神代の英雄は生身の時の方がサーヴァント時より遥かに強いが、近代の英雄はサーヴァントになった時の方が遥かに強いのだ。

 そういえばその生身の神代の魔女を、サーヴァントであるクー・フーリンが斃したのを思い出してしまう。渋い顔をしてその時の事を士郎が問うと、クー・フーリンは笑った。力の差を覆し、不可能を可能にしてこその英雄だぜ、と。それに師匠は死にたがっていたからな、心で勝っていればどうとでもなる。件の海賊もその口だろうさ。心配しなくても充分に立ち回れると思うぜ。
 信頼する槍兵の言に、なるほどと士郎は一応納得する。人理焼却に対するカウンターのサーヴァントを探して来たのに、生身の人間を見つけた時はどうしたものかと悩んだが、直接会って話した方がいいか。

 斯くして小島を探索する。といっても、索敵に優れたクー・フーリンとアタランテ、赤いフードで顔を隠した切嗣がいる。ドレイクとその部下を発見するのに然したる時間は掛からなかった。
 三方に別れて斥候に出て、まずドレイクを発見したのはアタランテだった。

『重傷者多数。件のフランシス・ドレイクと思われる「女」は、右腕を骨折して左目を失明してるようだ。命に別状はないが、他の海賊の中には死に瀕している者もいる』

 女だと? と
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ