掌の上だと気づいて士郎くん!
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嘗てヘラクレスが成した十二の功業。その三番目の試練として課されたのが、牝でありながら黄金の角を持つケリュネイアの牝鹿の捕獲である。
ケリュネイアの牝鹿は、狩りと弓の腕に優れた女神アルテミスすら捕らえるのを諦めた聖獣だ。これをヘラクレスは、ケリュネイアの牝鹿を傷つけるのを禁じられた故に、一年もの間追い続けて漸く捕獲した。
人理を阻む皮を持つ神獣、ネメアの獅子。ヒュドラ種の中でも特殊変異種である、宇宙一の猛毒を持つヒュドラ。双方に次ぐほどにヘラクレスが苦戦し、時を掛けた駿足の獣である。その速力はアルテミスのみならず、ヘラクレスすら正攻法による捕獲を諦めさせたほどだ。彼の駿足のアキレウスに勝るとも劣らぬ脚を持ち、その余りの速さ故になんら海に関する加護を持たぬ獣でありながら、水面を蹴って走行するのに支障を来さなかった。
――アルケイデスは宝具『十二の栄光』により、嘗て捩じ伏せた生前の試練から宝具を引き出せる。このケリュネイアの牝鹿もその一つである。
アルケイデスは聖杯を奪取する為に黒髭を襲撃し、サーヴァントを三騎撃破した。この時代の星の開拓者フランシス・ドレイクには、船を損傷させ手傷を与えたものの、突然の嵐の中で帆を張り、空を飛ぶようにして逃げ出された故に取り逃がしたが――これを追う意義は見いだせなかった故に放置している。
迷宮を踏破して、怪物を屠り、女神を捕獲した。島を巡り契約の箱を探し求め、途中発見した狩人の霊基で現界していた月女神を屠った。潜んでいたアルカディアの狩人も、同じアルゴー船に召喚されていながら離脱した者故に処分した。
まだ成果は上がらない。捕獲した際に重傷を与えた女神を連れ回し、苦痛に顔を歪めるのを眺める趣味は無かったが、代わりに気に掛ける事もしていなかったとはいえ――いい加減苦痛に呻く女神の存在が煩わしくなったアルケイデスである。彼は一旦船に戻り、女神を友人に預けるべく帰還する。
アルゴー号の船長にして、此度の現界に際しての召喚主であるのは、アルケイデスの不肖の友人だ。名はイアソン、生前英雄以上の怪物であったアルケイデスを信頼し、友情を懐かせてくれた存在である。
――なるほど、君が『 』か。
――素晴らしい、羨ましい! 確かに噂通りの化け物だ!
――安心してほしい。私は君を優遇し、使ってみせる。
――私と……オレと共にいる間だけ、君は化け物じゃあなくなるよ。
――未来の王を護りし、大英雄だ。
生前出会った時に掛けられた言葉を。アルケイデスは、その霊基が跡形もなく反転してしまった今でも思い返せる。
余りにも強すぎ、余りにも超越していた故に。己は英雄ではなく、化け物なのではないかと苦悩した日がある。或いはこの言葉が無け
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