掌の上だと気づいて士郎くん!
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かし天高く在った太陽が地平線に失せ、再び昇り始めるまで待ってもイアソンは戻ってこない。アルケイデスは舌打ちした。何をしている、あの戯けは、と。またぞろコルキスの王女に唆されたか。
アルケイデスはあの王女を疎んでいた。毛嫌いする王族だからというのもあるが、あの女も遡れば神に属するルーツを持つ。アルゴー号の動力源にされてさえいなければ捻り潰していた。
何より嫌っていたのは、イアソンを操っているような雰囲気を感じ取ったからである。奸物だと見抜いた故に――友人を操る魔女を機会があれば殺してしまおうと思っていた。
幾ら待っても帰ってこないなら、いるだけ無駄である。アルケイデスは船を出て、自発的に契約の箱の所有者ダビデを探す事にする。
アルケイデスが女神の捕獲に出る前、トロイアのヘクトールが聖杯を持ち帰ったが、それ以来姿を見せていない。あの男は何をしているのか。
あれほどの男、そう簡単に斃れはしないだろうが――もしもは有り得る。カルデアが人理修復の為に現れ、あの男と交戦して撃破するというのは想定される事態だ。
味方として恃める人格と実力である。戦っているなら援護を、アルケイデスが先にカルデアと遭遇したならこれを撃滅するのもやむを得まい。
アルケイデスとしてはカルデアに悪印象はないが、生憎と敵対する定めである。敵であるならば是非もない。復讐者は己の目的の為に、友人の理想の為に弓を執るだろう。
――しかし、その前に。
「……星の開拓者を見逃したのは、失敗だったやも知れんな」
あれほどの離れ業を、幸運にも果たしてのけた女だ。人間であり、今を生きる者故に見逃したが――後になってそれは失敗だった可能性を考えてしまう。
アルケイデスは人間を舐めていない。残滓程度だが僅かな英霊としての意識がフランシス・ドレイクを見逃させたが、後顧の憂いになり得ると舐めていないが故に思い直した。
「再度出会う事があれば、屠っておくとしよう」
そう一人ごち、アルケイデスはらしくもなく苦笑する。
独り言が多い己を嗤ったのだ。まるでイアソンに会えなかったのが悔しかったかのようではないか。
ちくりと喉を刺す、小魚の骨のような違和感を感じながらも、アルケイデスはケリュネイアの牝鹿に騎乗して船を出た。
目標の一つに、フランシス・ドレイクの殺害を加えて。
早まったかと頭を抱えるも後の祭り。後悔先に立たず、覆水は盆に返らない。悪党を縛る契約の儀は、そのまま自縄自縛の態を成していた。
「――デュフフwww よもやあの騎士王が斯様に可憐な乙女であったとは、この海の黒髭の目を以てしても見抜けなんだwww あ、握手してください一生洗いませぬ故!」
「……」
「無視! 完璧
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