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戦国異伝供書
第三十一話 九州攻め前その五

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「何かがいることもです」
「有り得るな」
「全てのことに表と裏があります」
 こうも言うのだった。
「そして裏に人がいてもです」
「不思議ではなくか」
「よからぬ考えを持っていても」
「やはりか」
「不思議ではないので」
 そう思うが故にというのだ。
「殿に何かをしてきても」
「あるか」
「否定は出来ないかと」
「左様か、ではじゃ」
「天下統一の後は」
「裏についてもな」
 日本のそこにもというのだ。
「調べていくか」
「そうされますか」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「出陣前にしたいことがある」
「それは何でしょうか」
「茶じゃ」
 信長は笑ってだ、帰蝶にこれもと言うのだった。
「茶を飲んでな」
「そのうえで、ですか」
「出陣したい」
「左様ですか」
「ここでよく酒となるが」
 酒宴、それを開いて景気づけを行うというのだ。
「やはりわしは酒はな」
「どうしてもですね」
「駄目じゃ」
 飲めない、だからだというのだ。
「少し飲んでな」
「それで、ですね」
「飲めなくなってその日起きると頭が痛くて仕方ない」
 二日酔い、それになってしまうというのだ。
「だからじゃ」
「お酒については」
「よい、わしは酒よりもな」
「お茶ですね」
「茶と菓子でじゃ」
 この二つでというのだ。
「楽しんでな」
「そのうえで」
「出陣したいがよいか」
「勿論です」
 帰蝶は笑って応えた、そうしてだった。
 信長は出陣前は茶会を開いてそれを楽しむことになった、戦を前にしてもくつろぐべき時は楽しんでいた。
 それは明智も同じだった、新たな領地となった出雲での出陣の用意をしつつ腹心である斎藤と明智秀満に言った。
「さて、出陣の用意は進めておるが」
「そちらは順調です」
 斎藤は明智に笑顔で答えた。
「むしろ予定よりも早いかも知れませぬ」
「そうじゃな、よいことじゃ」
「毛利殿も戦の用意は順調とのこと」
 秀満も明智に述べた。
「それではです」
「すぐに用意が整ってな」
「そのうえで」
「九州に攻め入ることが出来るな」
「左様ですな」
「それで戦の前に宴を開きたいが」
 景気付けにだ、直前には勝ち栗にうち鮑と昆布も食し連歌会も催す。これは戦に勝つことを願う縁起付けのものでもある。
「それと共に茶会も開きたい」
「そしてそこにはですな」
「お母上もですな」
「そうじゃ、お迎えしてな」
 そのうえでというのだ。
「楽しく行いたい、わしにとって母上はな」
「これ以上はないまでに大事な方ですな」
「何といいましても」
「うむ、母上がおられてじゃ」
 それでこそというのだ。
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