第三十一話 九州攻め前その三
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「滅ぼさずな」
「残されていますな」
「そうじゃ、それで島津家もじゃ」
古いこの家もというのだ。
「残す」
「そのことをここでも言われますな」
「そうじゃ、しかしあの家は薩摩と大隅のみにする」
領地のことはしかと定めていた。
「大きな力は持たせぬ」
「九州を全ては」
「到底な」
それは絶対にさせぬというのだ。
「あくまで薩摩と大隅のみじゃ」
「これまで手に入れた肥後や日向は」
「返させる」
「公儀に」
「そうさせる、そしてな」
「九州の仕置が終わればですな」
「これで天下統一となる」
信長の目指すそれが成るというのだ。
「その時にな」
「だからこそ」
「この度の戦も勝つ」
「必ずや」
「その様にじゃ、ではこれより天下に達する」
信長はあらためて告げた。
「九州を攻めるとな」
「さすれば」
「これより」
重臣達も応えた、こうしてだった。
九州攻めの用意がはじまった、すぐに天下の殆どまさに九州と伊予以外の全ての国が動きはじめた。
その状況を見てだ、信長は安土で帰蝶に言った。
「ではわしもじゃ」
「もう暫くすればですね」
「出陣じゃ」
こう言い切った。
「そうなる」
「では」
「暫し留守を頼む」
帰蝶にこうも言った。
「よいな」
「はい、それでは」
「そしてじゃ」
「戻られた時は」
「天下統一は成っておる」
その様になっているというのだ。
「まさにな」
「遂にですね」
「それからは天下泰平の為の政であるが」
「既に色々と用意されていますね」
「うむ、しかしな」
「しかしといいますと」
「ここまできてもじゃ」
どうしてもという顔になってだ、信長は言うのだった。
「わしは何かな」
「気になることがありますか」
「うむ、何度かお主にも言っておるな」
「天下の裏にですね」
「何かがおる」
「闇の様に」
「そうした者達がおってな」
そうしてというのだ。
「天下を害しておるのではとな」
「思っておられて」
「調べようとも思っておる」
「そうですか」
「まさかと思うが」
「裏にいる何者かをですね」
「探しだしてじゃ」
そのうえでというのだ。
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