第7話 第三次ティアマト会戦
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
帝国暦485年の末、銀河帝国では新たな出征が決定されようとしていた。
「それでは陛下の在位30周年に花を添えるために出征せよと言われるのか!」
銀河帝国宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥は苦々しそうに言う。
言外に、不本意だという態度を示していた。
近年では珍しく、年が明ければ在位30年の長きに渡る皇帝フリードリヒ4世だったが、内政面での治績はまったくと言ってよいほど無い。
このような場合、対外的な軍事行動の成功によってその事実から目を逸らさせるのは為政者の常套手段と言ってよかった。
「だが司令長官、この数年反乱軍の大規模な攻勢が続いているのも事実だ。先日もイゼルローン要塞に六度目の攻撃をかけてきておる」
「それは撃退しておるし、その前にはヴァンフリート星域まで進出して叛徒どもの前線基地を叩いておるではないか」
「しかし二年前にもイゼルローン要塞に肉薄されておるし、さらにアルレスハイム星域の会戦でも大敗を喫しておる」
「…………」
事実だけに、ミュッケンベルガーは何も言えないで口を噤む。
確かに、ここ最近銀河帝国軍の戦績はあまり良いとはいえない。
第五次、第六次イゼルローン要塞攻防戦は帝国軍の勝利ではあるものの、それはイゼルローン要塞に頼ってのものであり、しかも要塞への肉薄や直接攻撃を許している。
勝って当たり前の戦いでの苦戦……少なくとも一般の人にとってはそう見えた。
故に、帝国政府は軍の勝利を望んでいるのである。
それも、会戦による華々しい勝利を。
「別に卿だけの責任を問うているわけではない。我らは同じ責任を負うておるのだ」
この軍務尚書エーレンベルク元帥の言葉に統帥本部総長シュタインホフ元帥も頷き、ミッケンベルガーが渋々同意する。
「ここいらで反乱軍に手痛い報復をくれてやり、我らも実績を上げねばならぬ時期にきておる。ということだ」
「…………」
ミュッケンベルガー元帥に不満があろうとこれは帝国政府の正式決定であるため、決定が覆るわけでもない。
帝国軍の出征は、既に決定事項であった。
・・・・・・
年が明けて帝国暦486年1月。
帝国軍は47400隻からなる遠征軍を皇帝臨御の下、出撃させようとしていた。
* * *
帝国軍の侵攻近しの報はフェザーンを経由して、既に同盟軍の知るところとなる。
同盟軍は直ちにイゼルローン回廊外縁の辺境星区に警備部隊を緊急展開したが、輸送艦配備のミスから前線に展開した部隊で生活物資とエネルギーの欠乏が深刻化。
軍では対応できず、やむなく近辺の星区から民間船が100隻ほど雇われて物資の運搬に当たることになった。
しかし、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥が不明確な形で戦力の保護を命じた
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ