第二章
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何故あれはここまで邪悪を孕んだのだ…?」
腑に落ちぬと言った風にそう問い掛けるシュトゥフに、マルクアーンは少し寂し気な表情を見せて答えた。
「あれ…いや、あの中に封じされたある種の感情や記憶は…シュテットフェルト・ファン・ゾンネンクラール、旧皇家の皇子のものだ。」
それを聞くや、その場に居た全員が唖然とした。
その名は…今や誰の口にも上らない。先の大戦を引き起こす引き金を作り…そして自らも引き金の一部になった人物なのだ…。
過去の幻影が…この聖玉を黒く染め上げていたのである。
「全く…次から次へと厄介な!」
ルーファスは舌打ちしつつ手を翳した。そして静かに目を閉じて、歌うかのように呪文の詠唱を始めたのであった。
「これは…旋律魔術…。」
ルーファスが行使したのは、以前にも行使したことのある魔術であった。
その詠唱を聞いたヴィルベルトは、優しさに包まれて消えて行った二柱の妖魔を思い出した。
この魔術は魔の力を反転させて浄化させるもの…だが、前とは少し異なり、淡い光が降り注ぐことはなく、見れば一旦浄化された光が聖玉の中へと戻っている様にも見える。
ルーファスの詠唱は一時間程続いた。それはこの聖玉がどれ程強い邪気を帯びていたかが窺えるものであった。
「これで…まぁ…大丈夫…だろう…。」
そう言うなり、ルーファスは疲労でその場に仰向けに倒れた。
「疲れた…寝たい…。」
「師匠…ここでは無理です…。」
カッコイイ!と思っていたヴィルベルトだが、だらしなく大の字になっている師の姿に一気に落胆したのであった。
それを見て、シュトゥフはふとあることを思い付いてマルクアーンに言った。
「シヴィル。あの丸薬、体力も気力も回復するなら、こやつにやっても良いのではないか?」
「そうじゃのぅ。ま、半欠けもあれば充分じゃな。」
そう言うや、マルクアーンは丸薬を取り出して半分に割ると、それをルーファスへと渡した。
「これ…何で出来てるんだ?」
ルーファスは訝しげにそう問うと、マルクアーンは「つべこべ言わずに飲まんか!」と一喝したため、ルーファスは渋々それを口にした。
「苦っ!」
「一応は薬なのだから当たり前じゃろうが。菓子だとでも思ったか?」
そう言いながらも、マルクアーンは"聖クラヴィアーノのジェード"を慎重に取り出し、それを光に翳して観察した。
「うむ…邪気は完全に抜けておるな。これであれば、もうグールは動くまい。しかし…」
そこまで言うと、マルクアーンは顎に手をやって何やら考え込んだ。
「どうなさいましたか?」
考え込むマルクアーンに、ルークが心配そうに問い掛けると、シュトゥフも「まだ何かあるのか?」と聞いたため、マルクアーンは彼らへと視線を向けて返した。
「いや…思い過ごしならば良いの
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