第二章
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感情の中で一際響くその名に…マルクアーンは、この感情の持ち主が誰であるかを瞬時に悟った。
そして、この聖玉が何故ここまで禍々しくなったのかも…。
だが、ここではどうすることも出来ない。今ある四人の力では封ずることも打ち壊すことも…そこから動かすことさえ儘ならないのである。
本来ならば、この〈聖クラヴィアーノのジェード〉は"癒やし"の力を有し、あらゆる病や怪我を治していた。だが、今はマルクアーンや高位の魔術師、神聖術者の一部なら触れられもしようが、他では瞬く間に闇へと呑まれる。
故に、マルクアーンはルークに魔術でルーファスへと連絡を取るよう伝えるや、スランジェへと問い掛けた。
「お前、移転の陣は描けるか?」
「はい。ただ…行使するには…。」
「なに、行使する必要はない。」
「…?」
何か策があるのだと考え、スランジェは何も問わずに陣を描き始めた。
然して掛らず描き終えるや、直ぐ様陣が輝き始め、描いたスランジェだけでなく、シュトゥフも目を丸くした。
ただ、ルークはそうなるのではないか…と考えており、マルクアーンを見て頷いた。
「来られますね。」
ルークがそう言ったと同時に、そこからルーファスとヴィルベルトが姿を現したのであった。
「…え!?どうして…!?」
スランジェは些か狼狽した。
描いただけで何の力も注いではいない陣である。それを使って移動出来る人物などいない筈なのである。
移転の陣は、固定されて魔力が施されたものか、自身で行って描いたものならば行使出来る。が…これは他人が描き見知らぬ場所…論外と言えよう。
だが、現にこうして二人の魔術師が移動してきた…一体どうなっているのかと目をパチクリさせていると、ルーファスはスランジェに言った。
「大したこたぁねぇよ。ルークから凡その位置を聞いたからな。そこへ力を飛ばしてそのまま注ぎ込んだだけだ。」
要は、探査の魔術で場所を特定したついでに行使出来るだけの魔術を入れた…と言うことなのだ。
尤も、あのコアイギスさえ行使出来るか疑わしい離れ技なのであるが、当のルーファスはケロッとしている。
「マルクアーン様…彼は…。」
「気にするな。あやつの行動を一々気にしていると、あっという間に老けてしまうぞ?」
呆気にとられるスランジェにそう言うや、マルクアーンは直ぐにルーファスの元へと歩み寄った。
「ルー、お前ならばあれを何とか出来よう。」
そう言って聖玉を指差すと、それを見てルーファスはあからさまに嫌な顔をした。
「ありゃ…厄介だな…。」
「師匠、あれ…何ですか?物凄く嫌な感じがします…。」
ヴィルベルトさえ分かるだけの強い邪気…。本来なら、それはこの部屋にいる全員が死んでもおかしくはない邪気の塊なのである。
「シヴィル。あれは…いや、
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