episode3『怯える魔女と激昂の鬼』
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ずい――!
製鉄師は、駄目だ。倒れてる場合じゃない、せめて、義兄妹たちを、シスターを、彼女を、逃す時間くらいは稼がないと。
もしかしたら手荒な事はしないかもしれない、なんて思っていた。けれどヒナミのあの反応からして……あの言葉からして、相手は絶対に考え得る限り最悪の手段を行使してでも、ヒナミを奪いに来る。
そうなれば、確実に――みんな巻き込まれてしまう。みんな、みんな死んでしまう。
「ぅ、あ……あ”あ”……っ、ぁ”ぁ”ぁぁっ!!!!」
「……っ、と」
拳を大きく振りかぶって、振るう。
男は少々面食らったような顔をしたが、当然のようにその拳をパシンと受け止める。が、想定外の威力だったのか、簡単に拳はその手を弾き飛ばして、男の?に渾身の一撃を直撃させた。
「……っ痛ぅ……これは……まさか、魔鉄を……」
「……ぶらっど、すみ、すぅ……っ!!」
間髪入れずに、二撃目を構えて踏み込む。もはや正常な思考など保ててはいなかった、この場で戦っていても誰も逃げる訳がない、そもそも相手はどう見たって日本人で、海外からの刺客である筈なんてないのに、それすらもシンの目には入っていなかった。
シンの中に今ある判断基準は相手が製鉄師であるかどうか、その一点のみ。それに合致するのであれば、彼らはこの教会への侵略者であると――そう、本気で思っているのだ。
こちらの攻撃が通用しない訳じゃない。例え子供でも、鬼の力ならば、生きる戦略兵器に傷を付ける程度の事は出来る。それは今の一撃の手応えでハッキリと確信した。
倒す事は出来ないだろう。せめて、せめてシスターが気付いてみんなを逃がしてくれるまで――
「……自分が一番苦しいだろうに、頑張るねぇ」
「――ぇ……ぁ……?」
唐突に、視界がブラックアウトする。
全身を、暖かい感触が包む。羽毛のような感触がどうにも心地よくって、全身から力が急速に抜けていった。体に纏わりつくかのような鉛のような重さも剥がれ落ちていって、意識の要石が深い眠りの海に沈んでいく。
眠っちゃだめだ。守らないと、みんなを。
だめだ、だめだ、ぼくは、だって、それがぼくの、つみを、だから――
「――まも、ら、ない、と」
「……大丈夫、その為におじさん達が来たんだ。カッコいいぜ、お兄ちゃん」
意識が消える寸前。大きな手が、シンの頭をわしゃわしゃと撫でたような気がした。
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