episode3『怯える魔女と激昂の鬼』
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っていた本は彼女が読んでいるようだし、マナには事情を説明して、ヒナミが読み終わったら貸してもらうように頼むとする。
ゆっくりと読める場所と言えば食堂辺りだろうか、などと考えながら、ひとまず彼女を外に誘導しようとする。
「とりあえずヒナミ。ここで読むのは体に悪いし、ついておいで」
そう声を掛けて、一先ず先程のシリーズが並んでいた本棚の前まで戻る。マナから預かっていた返却する本を元の場所に戻して、先に教会を案内した方が良いかな、なんて考えていた時に、ようやく気付く。
本を抱えて立ち上がり、歩きだそうとしていたマナは、驚いたような、怯えたような表情で、シンを見つめていた。
「……ヒナミ?」
突然に向けられたその視線に、困惑しながらも呼び掛ける。何か変な事を言ってしまっただろうか、と自分の発言を思い出そうとするも、それより先に答えが彼女自身の口によって提示される。
「――なん、で、わたしの、名前……」
「……ぁ」
しまった、と内心で呟く。
ついさっきまで気を付けていたことを、少し意識が思考で逸れた途端やってしまった。馬鹿だ、自分はまだ彼女から名前を聞いてはいないではないか。
「あ、えー、っと……その、シスターから名前だけ聞かされてて……」
「嘘。ともよ、わたしのホントの名前誰にも言わないって言ってた。有馬ミナって、暫くの間はそう自己紹介しろってそう言ったの、ともよだもの!」
「――。」
やってしまった。と、遅すぎる後悔が頭を埋めつくした。
あまりにも考えなしなこの頭に嫌気が差す、シスターだって彼女の事は分かっているとさっき考えていたのは自分ではないか。正体を隠すのなら、名前を隠すのは当たり前のこと。その例に習って、シスターも彼女もその択を選んだのだ。
……だというのに、ここにいる子供たちは誰も知らないはずの本名を知っているシンは、一体なんなのだ――という話だ。
だからといって本当の事を話す、というのもダメだろう。“キミが来るちょっと前に、キミを狙ってる製鉄師達が教会に来ていた”、なんてバカ正直に言ってみろ。彼女はこれから毎日、自分を狙う恐ろしい者達に対する恐怖に囚われながら過ごす事になる。
「あなたも、『あの人たち』の仲間なの……?わたしを攫いに来たの……っ?また、全部燃やしちゃうの……!?」
「ち、違……っ、そうじゃないんだ……!僕が君を知ってたのは、そうじゃなくって……」
「だって、それ……その腕輪……っ!あの人たちの1人が付けてたのと、同じ……っ!」
「……え?腕、輪……?」
ヒナミはシンの右腕を指差してそう言う、だが当のシンにとってはその指摘の意味がまるで分からない。腕輪も何も、シンの腕は“一般的な腕輪を付けら
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