第六十四話 王の帰還
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支え続けるのはかなりの負担だ。この8年間魔法力が衰えた分、筋力も鍛えのだがそれでも結構大変だった。
幸いにもすぐに兵士が来てくれて、アベルを部屋まで運んでベッドに寝かせてくれた。
*
「それで王のご容態は?」
オジロンさんが深刻そうに医者に尋ねた。
「肉体的には何ら問題はありません。呪いの力も完全に消えています。ただ……」
医者は一回そこで言葉を切った。
「8年という長い月日で自らの肉体を全く動かせなかった事で体の機能を再び把握するのにそれなりの時間がかかりますかな。時間をかけ、睡眠と食事と運動で療養する。これしかありません」
「そうか……。いや、王が生きて戻っただけでもありがたい」
ベッドで死人のように眠りこけるアベルを見てオジロンさんはそう呟く。
「後は、一刻も早く王が回復するよう祈るだけだな」
*
アベルは3日間の間死んだように眠り続け、やっと目を覚ましても反応に乏しく相変わらず目の前の事を認識しているかどうか不明瞭で。手もうまく扱えない為メイドに水や食事を口に運んでもらう必要があった。8年ぶりの食事に対してもアベルは特に表情を変える事なく無反応のままで1日分の食事を取り終えた後はひたすら眠り続ける日々を送っていた。
そんな彼の容態がやっと回復し出したのはグランバニアに戻ってから2週間後の事。
アベルの起きている時間は日に日に増えていき、乏しかった意思も次第に鮮明になっていき、大分受け答えが出来るようになった。まだ体の方は万全ではない為、ベッドから出ることはできないがそれでも著しい回復と言えた。
しばらく会話しても大丈夫と、許可が出たので早速私はレックスとタバサを連れてアベルの元へと向かう事にした。
「2人とも緊張してる?」
「う、うん」
「どう接したらいいかわからなくて……」
実の父とはいえ8年間も生き別れていたのだから、2人の緊張も当然だ。今まで家族はお互いの存在しかいなかった2人とって新たに父親という存在が入ってくるのは想像できないし、だからこそ緊張しているのだろう。
「先生は緊張しないの?」
レックスの問いに少し思考を巡らせた。8年越しの再会(と言えるかどうかは微妙だけど)をした時にアベルに対して私が思った事は何か。ただアベルが石から戻って良かった。それだけをただ純粋に、強く思っていた。あの瞬間は私は8年という時間など忘れていた。あの時の私はアベルと共に冒険していた『ミレイ』だった。
「緊張はしないかな。最初は私も8年という時間を意識していたけれど、でも全然そんな事なかった。だから、あなた達も大丈夫よ。きっとあなた達は家族になれる。人の繋がりは、呪いに壊されて直らないようなそんな弱いものなんかじゃないから」
話をしているとアベルの部屋のドアが見えてきた。扉を
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