第六十四話 王の帰還
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ストロスの杖の力によって石の呪縛から解放されたアベルだったが、反応が朧げだ。一応目を動かして私たちに反応はしているものの、言葉も意味をなしてないし、体の動作も不安定で起き上がろうとしても起き上がれない。長年体を思うように動かせなかった弊害だろう。
レックスとタバサが、立とうとして倒れそうになった父親を慌てて支えた。
「こ……、これはどういう事だ!目の前で石が人になった!私は気がふれてしまったのか?!」
「落ち着いてください、ブルジオさん。石が人になったのではありません。この人はグランバニアの国王であるアベル様。彼は邪悪な魔物に呪いをかけられ、その姿を石に変えられていたのです」
動揺するブルジオさんに、フローラさんが冷静に説明した。
「石像ではなく人だった……?彼は、魔物に呪われていた……?……私は、私は知らなかったとはいえ宣伝文句にあっさりと騙され、何の罪もない哀れな人に酷い仕打ちをしていたというのか…………」
両手で顔を抑えしばらくブルジオさんはそのままそこに立ち続けたまま、動かなかった。そして顔から手を離し、彼はアベルの元へと近寄った。
「知らなかった事とはいえ、あなたにはとんでもない非礼をしてしまい、大変申し訳ございませんでした……。そして、お願いがあります」
ブルジオさんの声が震え始め、頬に涙がつたい、滴り落ちる。自らの体に落ちる涙にも反応する事なく、ただそれをアベルは見続けている。
「魔物達に連れ去られてしまった我が息子、ジージョを、どうか、助けてくださいお願いします、…………お願いします」
その言葉を受けたアベルはゆっくりと、おぼつかないながら腕を伸ばしブルジオさんの肩に手を当てた。そして何とか唇を動かして言葉を振り絞った。
「か……な……ら……ず……」
「ありがとうございます……、本当にありがとうございます……」
ブルジオさんは純粋な感謝の言葉を涙と共に零した。
「それじゃ、ルーラで帰りましょう。タバサ、準備は出来てる?」
「はい。大丈夫です」
タバサは自信を顔に浮かべストロスの杖を構えた。
「ルーラ!」
詠唱と共に青い光が私達を包み込み、一瞬の軽い浮遊感の後一気に体が上昇するのを感じた。と思えば束の間気がつけばグランバニアの城門前に着地していた。
「それでは私はこの辺りで。また何かありましたらご連絡下さい」
「本当にありがとうございました、フローラさん。この恩は必ず返します」
フローラさんとはそう言って別れ、彼女はルドマンさんの使者の船へと乗って行った。
「さて、私達も早くアベルを寝かせてあげなきゃ」
急激に石化から解放された影響かどうかわからないけれど、アベルはこの短い間に意識を失ってしまっていた。ただでさえ私より背が高くて体付きもがっしりしているのに意識を失った彼の体を
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