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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
流氷の微睡み
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収穫はナシだ。一発も掠らず凌がれた。あのセンセが来なきゃサンプルが取れたんだけどなぁ……」
「すまん。事前データじゃ長居悟の鉄脈術は受信は出来ても送信は出来ないものと思ってたんだが、違ったかもしれん。にしてもリック、リックねぇ……」

 男は難しい顔で考え事をしたが、やがて首を横に振った。

(まさかな。鉄脈術も魔鉄器もパートナーも名前も違う。あの忌まわしい夏以来何年も会ってないし、他人の空似か……)

 何にしても、これでタダでさえ難易度の高かった調査任務が余計に困難を極めそうであることが判明した。本音を言うと降りたい任務だが、今回は組織の最終目的とかなり近しい事由が関係している。ジャミング系の鉄脈術など持ってしまうから任務に駆り出されるのに、世の中儘ならないものだ。

「俺たちの戦いは、あの特組の中に混ざってる『醜いあひるの子』が見つかるまで続くわけだ。はぁ……予言を疑う気はないが、本当に本当なのかねぇ?」
「本当なんだろうよ。現にそうなってるし」
「イヤだなぁ。もし見つかったら殺すんだろ?お嬢、分かってて着いてきてんのかなぁ」
「――分かってますとも」

 扉がゆっくりと開き、別室で寝ていた筈のルーデリアが眠気眼(ねむけまなこ)を擦りながら部屋に入る。すこし足取りは落ち着いていないが、その声ははっきりとしていた。

「見つかれば殺します。殺さなければなりません。だからこそ、私がその事実から目を背けて奥に引っ込んでいる訳にはいかないの。いずれは命令を下し、責任を背負う側になるのだから」

 迷いのない言葉。だからこそ男は心配になる。今の組織のトップに、彼女のような高潔な責任感を覚えないのだ。そこも含めて彼女が背負おうとしているのであれば、それは途方もない重責だ。彼女が組織を変える者になるか、それとも組織に潰され憑りつかれるか……ここで論じても答えなど出ない。所詮男はその程度しか出来ない。
 しかし、殺すのか、と自問する。
 大人の殺しには山ほど関わったことのある男だが、子供に銃とナイフを突きつけるのは想像以上の抵抗感だった。プロとしてベストは尽くしたつもりだが、もしかすれば浜丘永海を襲った際にベストを尽くせていなかったのではないかとも思う。

 こと、ナンダは殺しを好まない。星は巡り合うものという美学を持つ彼女は、殺さずに済むなら殺さない選択をする女だ。故に組織では実力があるのにどこか軽んじられている。そのナンダが、気の重そうな顔で呟く。

「あの少年少女たちの青春の輝きは、人間だと信じたいな……」

 互いに助け合い、互いに励まし合い、そして決して逃げなかった魔女と、その魔女を絶対に守ろうとした少年。ルーデリアも思う所があったのか、悲しそうに目を逸らす。

 彼女は今回の任務で、結局それをはっきり
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