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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
流氷の微睡み
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たと分かっている。本当に頭の悪い自分に歩調を合わせてくれていると分かっている。その優しさが嬉しくて心地いいのに、崩してしまうのがいつも自分であることが悲しい。
 
「先生に駄目な子供だって思われたかな……」
「幻実症は心の病よ。先生たちもそれは分かってたわ」
「エデンに酷いこと言った……」
「謝れば許してくれるわよ。エイジだって。きっと、そういう子よ」
「軽蔑されたかな」
「……それは、明日確かめにいきましょ?何も怖がらなくていい……美杏と美音は、いつも一緒よ」
「うん……」

 甘えるように美杏の手を取り、両手を握り合う。
 心細い日も哀しい日も、いつだって隣にこの暖かさがあったから生きてこられた。
 どれほど握り合っていただろう。不意に、美杏から話しかけられた。

「先生、助けに来たね」
「うん……」
「ジャミングが切れるより前に変だって気付いて、町に向かってたんだって」
「うん……」
「あの時、生徒がどこにいるか探してたとき、美音の助けてって声が聞こえたって」
「そんなつもりで、言ってない……」

 あれは、八つ当たり。不条理だと思う者に対して不条理に当たっただけの言葉。悲劇のヒロインが紡ぐ美しい音色では断じてなかった。でも、そんな声に駆け付けたリック先生はナンダを一蹴し、そして美音が暴れている場面に戻ってきた。

『駄目、注射が打てない……お願い美音、ちょっとだけでいいからじっとして!』
『俺が動きを止める。止めたら慌てず確実に注射を打て』
『え、センセ――』

 じゅう、と、肉の焼ける音がした。力ずくで押さえるのではなく怪我をさせないようにした押さえ方だったが、その分だけ美音の鉄脈術の熱を浴びやすい。シャツと手袋で見えなかったが、微かに視界に映った手袋とシャツの継ぎ目は、皮膚の爛れが目に見えた。

 信用していないと叫んだ大人に、そこまでのことをさせてしまった。
 あれならば先生の言う通り昼寝でもしていた方がまだマシだった。
 それが美音にはどうしようもなく自分を惨めな存在に思わせた。

「呆れさせたかな。面倒な子って思われたかも。もう近づきたくないって、きっと、これまでみたいに……」
「美音」

 また自己嫌悪の渦に沈みそうになる思考を、美杏が遮る。

「先生、美音をここまで運んだのよ。お人形さんより優しく抱いて……起きたら無理しなくていいから休ませろって。自分も火傷してるくせに、変だよね」
「……うん」
「先生、これまで美杏たちの見てきた先生とも大人とも、違うんじゃないかなって……最近、ちょっとだけ思うの」
「………」

 美杏の言葉だからか、それともまだ抑制剤が効いているのか。或いは、自分もそれを心のどこかで認めているのか――分からないが、感情は高鳴りつつも
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