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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode2『全てが変わる日』
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。11歳から15歳程度で停止する成長、老化。一般的な人間に比べて頑丈、尚且つ長い寿命を持つ。

 この写真の少女ほどの綺麗な銀色は、魔女の中でも相当のもの……というか、まず居ないレベルのものだ。これは即ち、このヒナミという少女がそれだけ魔女として完成した存在である事を示す。

 ――ふと、一つの妄想が頭をよぎる。
 これ程の純度で完成された魔女ならば、ブラッドスミスと契約を果たせば非常に強力な存在となるだろう。そんなものが日本で誕生してしまえば、他国家にとっては都合が悪いだろうというのも容易に推測出来る。

 となると、海外から来たというこの二人組は――?

「……どうやら本当に知らないみたいね。仕方ない、地道に探すしかないか」

 女はそう気怠げに呟いて立ち上がり、軽く手をクッと振って見せる。大柄な男はそれに応じるように無言で頷いて、彼女を守るかのように女の隣に付いた。一瞬だけ長めの金髪から覗く蒼い瞳がシンを睨んだようにも見えたが、しかしそれも一瞬の事だった。
 毅然とした態度を保ったまま二人が聖堂を出て行くまでその背を見送り、その姿が見えなくなってからようやく大きな溜息を一つ。

 まったく、我ながら何を考えているのだろう。仮に先程の妄想が合っていたとしてシンには関係の無い話、それどころか。仮にそれを止めようとしたとしてシンに何が出来るだろう。
 彼らは製鉄師、ブラッドスミスなのだ。たった一組のブラッドスミスが居るだけで戦況が傾くとすら言われる生きる戦略兵器相手に、こんな子ども一人で何が出来る。無理だ、シンに出来ることなど何一つない。

「……だから馬鹿なんだ、お前は」

 相変わらずの自分の奢り腐った性根に、自虐気味な悪態を漏らす。人を――親をその手に掛けて今更善人ぶろうだなんて、虫がいいにも程があるだろう。そんな血濡れた手で救えるものなど、何もないというのに。

 視線を落として、手を開く。視界に映るのは、いつも通りに真っ赤な血に染まった鬼の手。醜く悍ましい、怪物の手。

「……シン兄?」

「――?シュウヤか、もう大丈夫。お客さんは帰ったよ、よく頑張ったね」

「う、うん。すっごい大きかったね、あのおじさん……」

 彼が怯えるのも無理はない。普段慣れている日本人はそもそも平均身長がそう高くはないし、今の男は目測でも恐らくは2mに近いほどの背があった。そのようにガタイもあり、あの厳つい顔も後押ししている。さらに言えばシュウヤは子供なのだし、怖がってしまうのも当然といえば当然だ。

 ニッと笑ってくしゃくしゃと彼の頭を撫でてやってから、奥に戻るよう促す。


 窓から見える蒼天の空で、太陽は既に午後の方角へと沈んで行こうとしていた。









 ◇ ◇ ◇
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