吹雪く水月8
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こまでかよ、アンタ」
「お前たちもここまでだろう」
既に進退窮まった。あと一瞬の時間のうちに、ナンダは無力化される。
しかし、その一瞬が恐らく運命を決した。
「うわぁぁぁああああああああッ!!」
「ちょっと美音!?何してるの、美音ッ!!」
古芥子美音の持つ魔鉄器のリングが空中で白熱している。
それは、この場の誰もが予想だにしていない光景だった。
「邪魔しないで美杏ッ!!今ならあのテロリストを仕留められるでしょッ!!」
「どうしてそれを美音がするの!?こんな時くらいは先生に任せればいいじゃない!?」
「あそこまで追い詰めてるんなら今の美音にだってやれるッ!!大人なんかに……大人なんかに借りなんて作らせないッ!!」
美音の双眸は未だに濁った激情に囚われ、コントロールを失ったように彼女の周囲が次第に白熱していく。周囲の為にコントロールしていた筈の鉄脈術の枷が外れ、暴走していく。先ほどエデンたちに向けられた、あの憤怒の顔だった。
この場でリックとルーシャだけが、その行動の理由を察する。
「幻実症ッ!?このタイミングで……ッ!エイジ君、術を発動して美音ちゃんの動きを止めて!彼女はいま自分の感情を自分で抑制出来てないッ!」
「人を使ってまで邪魔をするの!?やっぱりルーシャ先生も大人だッ……大人には、分からない!!わたしの苦しみも、美杏の苦しみもぉッ!!」
「美音!?美音、お姉ちゃんはここにいるわ!ここに『あの人たち』はいないの!!ここには美音も美杏も苦しめる人はいないから!!」
エイジとエデン、ルーシャとリック。この場の全員の意識と視線が美音に集中する。
もしもリックが生徒よりも悪の撲滅を優先する人物であったならば、決して決定的とは言えなかったであろう隙。皮肉にもその隙がテロリストたちの趨勢を変える。
瓦礫だらけのビルの隙間を縫って、謎のカラフルな文様が躍り出る。
「はぁっ、はぁっ、やっと撒いた……!おいナンダとお嬢、ジャミング切れたから撤退――ゲッ!?」
文様の正体は、さっき悟と永海の策略に嵌って民間警備会社の精鋭に追い回されたテロリストの仲間だ。ステルス迷彩の表面にペイント弾が無数張り付いたせいで変なモノが虚空に浮かんでいるように見えるのである。
期せずしての合流、そして敵側は混乱中。この好機を見逃すナンダではない。
「お、いいタイミングだ!よしお嬢、ステルスマン、しっかり捕まれよ!!」
「ちょっと、わ、私はまだ撤退指示は――」
「撤退だ撤退!!これ以上はこっちにリスクしかねえッ!!」
「いっくぜぇぇぇぇッ!!引力最大ッ!!」
ドウッ!!と――三人で固まったテロリストたちが宙を浮き、空の彼方で凄まじい速度で飛び去る。リッ
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