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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月8
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やれるんならやってよ!!助けて見せてよ、リック先生ッ!!」

 子供の癇癪としか言えないような幼稚な言葉だった。きっと大人が聞けば「出来ないことを要求されても困る」と言い、大人のそんな所こそ彼女は許せないのだろう。
 彼女の叫び声は虚しく空に響いた。そして――。

「助けを呼ぶ声……そっちか」

 空の彼方が煌めき、『棺桶ほどの鉄の塊』が矢を超える速度で飛来し、全ての瓦礫と遠心力を貫いてナンダの腹部に直撃した。ドズンッ!!と、大気が震え、腹に深々と鉄塊がめり込んだナンダが喀血する。

「ガッ……ハあぁぁぁぁああああアアアアアアアアアアアッ!?!?」

 全ての瓦礫が、氷が、空気が、その一撃に貫かれた。周囲の力が霧散してすべての瓦礫たちを失ったナンダは、全身の傷口から血を噴き出しながら後方に弾き飛ばされる。直撃した鉄塊は反動で空中に跳ね飛ばされ――遅れて飛来した一人の男の手がそれを掴み、抉れ果てた大地に降り立つ。
 着地の瞬間、ズン、と音を立てて小さなクレーターが出来上がった。

 その中心地からゆっくりと身を起こし、肩に鉄塊を担いだ男は、反対の手に抱えていた少女を下ろして口を開いた。


「ここからは先生の仕事だ。昼寝していいぞ」

「四人とも、今までよく耐えたね……偉いよ」



 = =



 聖観学園中学部三年部特組担任教師――リック・トラヴィスとルーシャ・トラヴィスが降り立った。
 
 リック・トラヴィス先生という男の過去についてを知る者は少ない。
 公私ともに彼のパートナーを公言するルーシャ先生についても同じだ。
 この日本で外国語教師でもないのに学校教師をしており、学園長からの信頼は厚く、そして他の教師からは少し過剰に思われるほど生徒の身の安全に配慮している。人物像はこの辺で止まるだろう。

 そして、彼に教えてもらった生徒に話を聞くと、100%同じ答えが出てくる。

 『未だにリック先生より強い製鉄師には会ったことがない』、と。



 吹き飛ばされたナンダにルーデリアは駆け寄っていた。
 数十メートルも弾き飛ばされ血を吐いたナンダは、その身をより赤黒く染めながら地面に転がり、動かない。

「ナンダ!?ナンダ、返事をしなさい!!」
「へへ、そんなカオすんなよお嬢……アバラが何本かイきかけたが、まだ闘れるぜ……!」

 まだ戦意の衰えを感じさせないナンダは、普段とは違う呼吸法を行っている。どうやら相手が追撃に来ないと見て自分の肉体コンディションを整える方に切り替えたらしい。呼吸の整ったナンダはゆっくり立ち上がる。その腹部には、突然飛来したあの鉄塊のような武器の痕がくっきりと残っていた。

 ナンダは極めて実戦慣れした製鉄師だ。戦闘狂であったり変な所で敵
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