吹雪く水月7
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少なくとも、あの時の訓練で繰り出した『拒止の風剣』を超える手段が。
「エイジ」
「どうしたの、エデン?」
「パパとママ、カラオケで絶対一度はデュエットしてたよね、ママから誘って」
「うん。『二重詠唱』の練習だっていつも言ってた。でも紗璃亜姉さんは、ただ一緒に歌いたいだけだってからかってたね」
「私たちもデュエットしたけど、結構いい点出たよね?」
「72,5点。全国平均を下回ってた……エデン?まさか……」
「リベンジ戦よ。『二重詠唱』で『拒止の風剣』を強化してぶつける!!」
『二重詠唱』――詠唱に魔女も参加することで通常の術をより強力にする、言うならば超必殺技だ。
「……………」
「返事はっ!!」
エイジは唖然とした表情で危うく足を止めかけたが、すぐさま動きを取り戻す。
「危険すぎる。一度も試した事がない。『二重詠唱』の発動は通常詠唱と違って足が完全に止まるし、防壁も一度もやったことないじゃないか」
「さっき古芥子姉妹が言ってたでしょ!!術なんて、出来ると思えば出来るのよっ!!」
「出来なかったら無防備になる!!その間に攻撃を受けたら――」
「そのための防御壁でしょうが!!」
『二重詠唱』は、その性質上詠唱しながらの移動が極めて難しいと言われている。より強力な術を放つためには、より濃密で大量のA.B.を展開し、そこにオーバーイメージを捻じ込むという強度の高い事象干渉が必要になるからだ。
通常の術ならば契約魔鉄器から放出されるA.B.で事足りるが、『二重詠唱』は違う。力の源である鉄脈を完全開放し、放出された力を二重の詠唱で練り直さなければいけない。この際の隙だらけの術士たちを守るのが、『二重詠唱』を収め、術の発動を補助する力の器、すなわち防御壁である。
この防御壁はたとえ製鉄の発動であっても硬い。A.B.を閉じ込める器である分だけ、物理はもちろん外のA.B.による干渉を一切受け付けない。
つまり、防御壁とは『二重詠唱』の前段階で放出されるA.B.を利用した副産物であって、二重詠唱が成功するということは防壁展開も成功するのだ。もちろん初段階の失敗で防壁も瓦解する。それをエイジはリスクと捉えているが、エデンとしてはチャンスだと思っている。
「ははーん、エイジったら私がトチると思ってるでしょ!」
「そういう訳じゃない。でも、その……」
「何よ!」
「物理学は得意だし計算も得意だ。でも僕は、人の心は計算できないから……」
分からないものは怖いから、遠ざけたい。昔から人類が考えがちなことだ。特に人の感情を読み取るのが妙に苦
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