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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月6
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ードが次第に煙を広めつつある。彼の言う化け物とやらに知らせるためのものだという可能性は十分にある。そうでなくても煙の色が赤くて目立つものだ。もちろんブラフの可能性もある。そして、男はそれを2分の1以上の確率に正解を持っていけない。

 しかし、その迷いもまた過ちとなる。

 突如、ビルが揺れる。突然のことに動揺した男だったが、すぐさま異変の原因に気付いた。
 ビルの周囲の風景が上に登っていく。いや、ビルが沈んでいる。

『この町のビルは大半が下の1階しか使ってないダミービルだ。戦時の避難場所としての機能を備えているからな。そして各ビル、各区画には――戦時を想定した地下格納機能までついてるんだ。くく、漫画だろ?ちなみにこいつのラインは魔鉄製だからな』
 
 つまり、最適の術効果範囲と位置取りを奪われたということ。
 目の前の少女は、或いはそのナビゲーターは、この短期間に大量の択を押し付けてくるらしい。しかも、戦闘能力に乏しい男が高所まで奪われれば、狡猾な彼らは町中から応援を呼んでいるかもしれない。
 咄嗟に二人から距離を取りつつ下を見ると、案の定十数名の武装した人間が見えた。

「ウソだろ、製鉄師同士の戦いに出張ってくるとは……こっちの手の内がバレたのか!」

 装備に見覚えがある。学校常駐の民間警備会社『SDF』の人間だ。その装備は準正規軍クラス、非製鉄師の集団とはいえ日本の警備会社では精鋭の中の精鋭である。男とは相性が最悪だ。
 光学迷彩はある程度レーダーや感知システムを無効化できるが、彼らのようなプロの装備するスコープには魔鉄製ステルスではカバーしきれない5以上の感知方法が内臓されている。術で乱すことは出来るが、この非常時に銃弾を避けながら術を発動させるのは至難の技だ。

『ボランティアの皆さんだ。テロリストを捕まえるためにお集まり頂いた』
「全員倒しておれも倒して、なおかつ術を唱えて現状を維持しつつ仲間と連絡を取っておれらの担任を相手に出来るかな〜?」

 男は考える。ビルが完全に下に降りきるまでまだ少し高さに余裕がある。逃げるならもはや今しかない。逃げればもはや撤退以外の選択肢はなくなる。既に捕捉されている以上、もはや追い回されるのは必定。そんな状態でもまだジャミングを維持して任務を遂行出来る程、男は鉄人ではない。

(不確定要素が多すぎる……潮時か!!)

 術の維持を諦め逃走しながら連絡を取り、このまま聖観学園から逃走する。
 もはや、それ以外に選ぶ道を許されていなかった。
 下から容赦なく浴びせられる強烈なゴム弾を躱しながら、男はワイヤーショットを器用に使いこなして撤退した。



 = =



「追え、逃がすな!鉄脈術を使う暇を与えるな!」
「GoGoGo!相手はジャミ
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