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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月4
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手に負える領分を超えている。最初からそう思っていたことだったが、それでも『エイジをこんな化け物と戦わせるわけにはいかない』。暁家のエイジのお姉ちゃんとして、例え今更であっても、言わずにはいられなかった。

「逃げよう、エイジ。今なら逃げられる」

 手はしっかりとエイジを握りながらも、指先は震えている。

「距離も離れたし、エイジの能力なら車ぐらいの速度は簡単に出るよね!?あんなのまともに相手出来ないよ!!」
「無理。逃げられない」
「どうして!?」
「さっきの攻撃の目的は僕たちを攻撃することじゃない。戦闘空間を自分に有利な場所に変えるためのもの。飛ばされた後もそのルートを逸れようとしたけど、あまり離れられなかった。そしてステージをうつさせたという事は、追いかける算段があるってこと」
「まぁ、そういうことになるのかな……」
「まぁ、そういうことになっちゃうよね……」

 双子が決して顔色の良くない顔で肩を落とす。エデンより早く、逃げられそうにない事を悟ったらしい。しかし、それでも逃げるべきだろう。先生があれほど命を優先しろと言っていた上、相手は下手をすると先生ほどの実力者だ。これだけ騒ぎが拡大すれば絶対に軍属製鉄師や職員が気付いてやってくる。エデンたち素人が戦うよりよほど勝算が高い。
 
「お願いエイジ、考え直そうよ!あんな破壊を生み出せる敵に叶いっこない!!」
「――大丈夫」

 エイジはしゃがみ、エデンの顔を自分の胸に押し付けて、背中を撫でた。

「あの人たちと僕らの戦力差は、そんなに開いていない。相手は鍛鉄(トライン)、つまり総合出力的には上位ではない。なのにああいったことが出来るのは、単に歪む世界(オーバーワールド)の性質がそうさせているだけ」
「でも、美音ちゃんの『浄道灼土』をあんなに軽々と!!」
「軽々ではなくて、そうするしか逸らす方法がなかったんだと思う。聞いて、エデン」

 エイジがエデンの眼を見つめる。いつも通りの感情の読み取り辛い目。
 しかし、そこに不安の色はなく、代わりに確信がある。

「あの人――ナンダの鉄脈術は、エデンが思っているほど便利なものじゃない。それに今頃は永海と悟が先生を呼びにいってる筈。それまで保たせてみせる。だから、ああ――寒くないよ( ・ ・ ・ ・ ・ )

 そう言って、エイジはまたエデンを抱きしめる。
 エデンはそう言われて初めて、エイジがどうしてこんなに戦いに躊躇わないのか気付いた。
 エデンは今、非日常的恐怖によって怯え、震えている。エイジはそれを見て、「エデンは寒がっている」と思っているのだ。そして寒さの元凶から逃げられないと知り、だったら自分が防風林となってエデンの寒さを少しでも逸らそうと思っているのだ。

 なんて、馬鹿な。本当
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