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【ユア・ブラッド・マイン】〜凍てついた夏の記憶〜
吹雪く水月3
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の事態に無関係ではいられない存在。
 慌てて鞄を漁ると、そこには魔鉄インカムがあった。
 そう、訓練で必要になるとパートナーが――悟が渡してくれたものだ。

『何やら非常事態らしいな。お前状況はどの程度把握してる?』

 いつも通りのふてぶてしさで、しかし聞いておきながらもきっとこちらより多くを把握しているであろう永居悟の声を聴いた永海は、努めて心を落ち着かせながらなるべく簡潔に状況を説明した。きっと今、自分が友達のために出来ることをこなすために。
 
「てな訳で、いま対絶賛お困り中だ」
『……成程な。だいたい把握した』

 話を一通り聞いた悟は、確信をもって話を進める。

『エイジの言葉、状況、拾った情報を総合すれば答えはおのずと出る。敵の製鉄師は二人だ。一人がエイジ達を襲撃した奴で、もう一人はこの通信不能空間を作り出している製鉄師だろうな。製鉄師の三人目はないと見ていい』
「ホントか?」
『いるならお前と俺が襲われてる。更に付け加えれば、敵は通信不能空間は作り出せても、作り出すのが関の山だ』
「……どゆこと?情報とか電波を自在に操れないってことか?」
『携帯や固定電話は遮断できてるのにこの直通インカムは通信が問題なく通っている。見た所電化製品は建物内でも不具合を吐き出しているが、そうでもないものもある。つまり『特定の条件に当てはまるものを乱している』ということだ。自在に操れるんだったらもっとやりようがあるし、襲撃の寸での所で連中はセキュリティに引っかかっているのも解せん。あと、もう一つ……』

 この短期間で次々に情報を見つけ出していくパートナーは、致命的な言葉を発した。

『ふんっ、『俺の鉄脈術が阻害されていない現状、あのビルの上で突っ立っている間抜けは俺より無能だ』ってことはハッキリしてる』

 どうやら敵は、この桁外れの情報収集能力の持ち主の存在を確認できていなかったらしい。
 イニシアチブが既に転がった事にも気付けない哀れな製鉄師が、たった今捕捉された。
 一切顔は見えないのだが、その時の悟はたぶん、いや確実に、とっても邪悪な笑みを浮かべていただろう。
 
『俺のオーバーイメージに及ばない以上、これ以降情報に関してはこっちのアドバンテージがある。くくっ……よし、永海。お前この間抜けの術を阻害してこい!俺のオペレートで完璧な勝利に導いてやる!』
「おれかよッ!?……まぁでも、やられっぱなしも腹立つしなー。うしっ、いっちょやったりますかぁ!!」

 気合を入れるように頬を両手で叩き、永海は再び走り出した。
 
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